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「ミュー粒子を利用した地下空洞調査システム普及のための性能評価」 （平成２４年度実施事業） 【目的】 宇宙からの放射を起源とするミュー粒子は、地表面に常に同じ数だけ降り注ぎ、通過した物質の 密度に応じて減数します。この測定機上部の地下地盤の密度差を測定しうる特性を応用して、２０ 年度から２３年度の調査研究で実験用の試作機を作成し、地下空洞測定能力を実証しました。 しかしながら、長期間の測定が必要となるため、測定事例は埋没管等の空洞を可視化した、地下 鉄駅等における僅かな事例しかなく、その地下空洞測定能力を示すには不十分な状況にあります。 地下鉄以外にも大きな潜在的需要が期待される水力発電所の地下水路トンネルの上部を対象に、空 洞の存在の有無や形状・地盤のゆるみに起因する密度の変状箇所を測定し、この分野での有用性を 示すことが普及に必要と判断し、本調査を実施しました。 【空洞探査の原理】 「宇宙線ミュー粒子」とは、宇宙からの 放射を起源とする素粒子の一つで、物資の 中を 100ｍ以上通過するものです。ほぼ一定 量のミュー粒子が地球に降り注ぎ、野外にお いては掌に１分間に平均で１個のミュー粒子 が通過していますが、人体への影響は全くあ りません。このミュー粒子が地盤を通過する 数をカウントすれば、そこに空洞がある場合 にはエネルギーの損失がない分だけ通過数が増え、空洞の存在がわかることになります。 【測定の概要】 関東圏内の水路トンネル（地表より深さ約４０ｍの地下）に一度に５方向を測定できるマルチ測 定機を搬入し、２ｍおきに１１箇所 （各地点での測定時間：２日）の測定を約１ヶ月間行いました。 【マルチ計測器】 「密度分布マップ」 【測定結果】 現地計測で得られた値をもとに水路トンネ ル上部の平面的な地盤密度分布を推定したと ころ、測定範囲の下流側（右の密度分布マッ プの右側)で連続して低い地盤密度が推定さ れ、トンネル内で観察された状況とおおむね 一致しました。今回の手法では地盤密度の鉛 直方向の分布はわかりませんが、この測定範 囲で以前実施されたボーリングデータとの対 比からこれを考察しました。 本調査区域は砂を含んだ地層内に地下水の 流れている場所であり、過去数度のトンネル 上部のボーリング掘削で空洞の存在とセメン トの充填を行った箇所でもありますが、測定 地点の下流側に連続して地盤密度の低下が測定され、トンネル上部に空洞が存在する可能性を示唆 しました（密度低下の規模は、空洞として換算した場合は２ｍ程度）。 この測定を行ったトンネル内部の状況は、天井から滴水が落ち、底盤には砂の堆積物があり、ト ンネル上部の砂が流れた様子が推察されました。 【底盤の堆積物】 【天井からの滴水】 これまでのボーリング掘削と比較して、極めて簡便な本手法で空洞の存在の可能性が高い箇所を 測定できたことは、４km程度の長い本トンネル上部の空洞調査の絞り込みのための事前調査として は、有効であると考えられます。 【問合先】 □ 調査研究全般：一般財団法人 機械システム振興協会 ℡:03-6848-5036 □ 本調査研究の詳細：川崎地質(株) ℡:03-5445-2071 一般財団法人ｴﾝｼﾞﾆｱﾘﾝｸﾞ協会 地下開発利用研究ｾﾝﾀｰ ℡:03-5405-7203 成果紹介リーフレット：２４－０６