による地形解析技術を利用した林地生産力の推定.pdfVIP

による地形解析技術を利用した林地生産力の推定 山県林業技術センター林業試験場・森林保全課 O図子光太郎 回 一 回 本研究では，地理情報システムをプラットフォームとした数値地形解析技術を用いて，スギ人工林 の生産力を推定することを居指しました.その結果，数値地形解析により算出したいくつかの環境忠 子とスギの地位指数との関に有意な相関が認められました.こられの環境因子を説明変数とする重回 帰分析から地位指数推定モデルを作成したところ，高い推定精度が得られました.このことから， } の手法の有効性が確認されました. はじめに 山県では 195。年代から 1980年代にかけて拡大造林政策により多数のスギ人工林が造成されまし た. しかし，近年の木材値格の低迷等による林家の経営意欲の減退や林業労働者の減少および高齢化 により，スギ人工林の管理の停滞が顕著になっており，このことは本県の森林政策上の大きな問題 のーっとなっています.こうした森林の今後の取り扱いを考える場合，現者の林業経営環境からみて， 用材生産林として経営的に成り立つ森林か，そうでなし1かを区分する必要があります.こうした区分 は基本的に対象となる林分の生産力を基準に行うことが妥当であると考えられまノ. そこで本研究では，地理情報システム (GIS)をプラットフォームとした数値地形解析技術を用いて， スギ人工林の生産力を広域的に推定し，今後のスギ人工林の取り扱いを検討するための林地生産力を 準とした森林ゾーニングを試みました. 1. 方法 (1)調査地 調査は富山県氷見市を対象に行われました (図糊1).急峻で積雪の多い富山県の山地にお いて，この地域は丘陵性の緩やかな斜面が多 く，積雪も少ないことから，本県有数の林業 地域のーっとなっています.かつて，電柱用 材として挿し木品種のボカスギが積極的に 入されたことから ボ、カスギ林業地として名 を馳せました.氷見市の森林面積 13，499ha のうち 4，704haが人工林で，その 90%以上 がスギ林で構成されています.氷見市内のア メダス観測地点(標高 7m)における平均気 温は 13.0ocで，年降水量は 2，123mmです. 地震は主に新第三紀の砂岩， シノレト岩お よび泥岩から構成されています.また，林地 における土壌の大部分は褐色森林土であり， 図f 調 図 緩傾斜地や尾根の鞍部などで，一部に黒ボク が出現します. -88- (2)野外調査 スギ人工林の生産力を把握するため 91筒所のボカスギ林分を対象に， 20mX20m の方形プロッ トを設置しました.プロット内のスギ個体について締高直径，樹高および林齢を測定しました.胸高 は直径巻き尺を用いて全木を調査し，樹高はレーザーデンドロメータを用いて優勢木を対象に 10 本程度を測定しました.林齢は 2個体から 3個体を対象に，成長錘を用いて測定しました.また， 林地生産力;土地位指数を用いて判定しました.地位指数は実測した樹高と林齢から，ボカスギ成長曲 線式(嘉戸・田中 1997)を用いて 40 の樹高を求めました. (3)数値地形解析 数値地形解析は， GISで取り扱う数値標高モデノレ (DEM)から，斜面の傾斜や方位，地形の凹凸と いった地形特性を算出する手法です. しかし近年では，このような地形特性だけでなく，地形によっ て生じる水の動きや， 日射量，気温の変化などを再現するモデルが考案され，水文学，生態学， および森林学等への適用が国られています.本研究では，この数値地形解析技術を用いて算出した地 形環境因子と地位指数との関係を中心に検討を行いました. 本研究において，数値地形解析を用いて算出した地形環境民子は，標高，斜面方位，斜面傾斜，開 度，横断曲率，縦断曲率，総曲率，尾根到達距離，渓流到達距離，流出寄与域，地形湿潤指数，推 日射量および推定平均気温の 13因子です.以下に，特に説明が必要と考えられる困子について解説 します. 斜面方位:斜面方位は，その地点の斜面向きについて北を 0度，南を 180震とし，北からの偏差 を度単位