大型ライシメーターによる積雪底面流出量の観測-北海道大学低温科学.pdfVIP

大型ライシメーターによる積雪底面流出量の観測 1 1 2 2 2 石井 吉之 、兒玉 裕二 、新堀 邦夫 、中坪 俊一 、藤田 和之 、 池田 正幸 3,4 3 、森 章一 1. 水・物質循環部門水文気象分野 2. 技術部装置開発室 3. 技術部共通機器管理室 4. 共和暖房工業株式会社 1．はじめに ライシメーター（lysimeter）とは、地表面を任意の大きさに切り出し、その中での水 や物質の輸送状態を知ることによって、より広域での水・物質循環を解明しようとする ための実験装置である。特に、測定の難しい蒸発散量を「直接」測定する手段として、 これまでにも多くの研究がなされてきた。これを積雪に適用したものが積雪ライシメー ターであり、積雪の中層や底面に集水容器を置き、積雪内部の浸透量や底面流出量、さ らにはそれらの化学成分変化を調べるために用いられる（図 1）。しかし、積雪内にお ける融雪水の流れが不均一なため、1 m2 程度の限られた集水面積では表面融雪量（流入 量）と底面流出量とが 1 ：1 に対応しないことが多い。水文気象研究室では 20 年程前よ り3.6 m × 3.6 m の大型ライシメーターを用いることによって、この問題を解決してき た。また、大型のみならず、100 個の枡に分割されたマルチ・コンパートメント型や 1.8 m × 1.8 m の中型、ロードセルを用いた大型秤量型など様々な形の積雪ライシメー ターを用いている。この報告では、こうした大型をはじめとする各種ライシメーターを 用いた積雪底面流出量の観測結果を紹介し、得られたデータの重要性や興味深い点につ いて述べる。 2．大型ライシメーターによる観測例 母子里の融雪観測室前の露 雪面雪面 場での積雪ライシメーターを 用いた観測は 1979～1984 年 自然積雪自然積雪 にかけての小島（1980）の観 測に始まる。0.9 m × 0.9 m の ライシメーターを 2 台併設し 地表面地表面 たが、それぞれの流出量変化 が異なっていたり、流入量と 流出量が 1 ：1 に対応しないな 転倒枡型流量計転倒枡型流量計 排水排水 ど、積雪内浸透水の非一様流 下が原因と考えられる問題が 図 1. 積雪ライシメーターの概要 10 図 2. 積雪内での融雪水の浸透状 図 3. 4 ヶ年分の浸透量と浸透速度 況（Nomura, 1994） の関係（Nomura, 1994） 生じた。融雪水は積雪内を上から下へ必ずしも一様には流下せず、氷板や層境界などで 水平方向に位置をずらしながら流下する （図2）。このため 1 m2 程度の小型のライシメー ターでは、融雪量（積雪表面からの流入量）に比べて著しく少量あるいは多量の流出量 が観測されることが多い。そこで、1987 年からは非一様流下の影響が小さくなるように 3.6 m × 3.6 m の大型ライシメーターを用いることにした。その結果、融雪期間全体でも、 また、晴天日の 1 日単位でも、流入量と流出量とがほぼ1 ：1 に対応するようになった。 1 ：1 対応が取れるようになった原因としては、大型化させたことに加え、ライシメー ターの縁を地面から 20～30 cm 立ち上げるようにした影響も考えられる。詳細は明らか ではないが、縁部での堆雪・融雪状況が周囲とはわずかに異なり、そのわずかな違いが 雪の中に壁のような構造を作り、この壁が融雪浸透水の水平方向の移動を小さく抑えて いることが考えられる。実際に、積雪深が 1 m 以上ある時のラジコンヘリに