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設置の趣旨を記載した書類 １．設置の趣旨及び必要性 １－１．設置の趣旨 現代社会に生きる人々は、地球規模の激しい変化のただ中に置かれていることをはっき りと実感している。今や工業的生産システムは成熟し、ハードウェアの生産と革新の速度 は極大化している。高度情報化社会の到来によって、情報の流通と加工が工業化され、入 手しうる情報の量と質が爆発的に増大している。東西冷戦構造の終焉の後、集団間葛藤は 地域化し細分化した。その一方、経済はますますグローバル化を続けている。結果的に、 はるか遠くの地域から悲しむ人々の声がインターネットを通じて直接届けられると同時 に、同じ地域の経済問題がわれわれの生活を直撃する。この巨大な潮流の中で、職業生活、 家庭生活、まったくの個人的な活動に至るまで、われわれは大きな変革を余儀なくされて いる。それにともない、生活様式、価値観、社会構造が多様化し、個人や集団が解決すべ き適応課題がますます複雑化している。 このような状況下で、心理的な問題について理解し、分析し、解決をはかる能力の重要 性はさまざまな局面でいっそう大きくなってきている。人間を取り巻く環境を物理的な環 境と心理的な環境とに二分した場合、現代社会がわれわれに矢継ぎ早に課し続ける課題は、 多くの部分が広義の心理的環境に対する適応課題だからである。先進工業国において、「モ ノ」の問題はかなりな程度克服されてきた。だが、「こころ」の問題は、われわれが心を もつ人と人とのつながりの中で生きる限り、そして、われわれが心理的存在である限り、 状況変化にともなって常に新しくつきまとう第一義的課題なのである。 そもそも心理学は、哲学の一領域として成立し、科学的な手法に依りつつ厳密な分析と 深い解釈を試みてきた。心理学の歴史は、心という曖昧で実態のない対象を知力を尽くし て明確に理解しようとする苦闘の記録である。その営みの結果、心理学は現在までに、人 間行動の理解、社会問題の解決、そして精神的健康の回復と維持にむけ、基礎から応用に わたる幅広い学問体系を生みだしてきた。したがって、心理学においてはぐくまれた、心 理行動に関する知識、分析手法、解釈に関する理解は、現代人が直面する多様な適応課題 に挑む際にきわめて有用なツールとなる力を持っている。「新たな未来を築くための大学 教育の質的転換に向けて(中央教育審議会答申)」(平成 24 年 8 月 28 日)で指摘されている 学士力の要件「知識や技能を活用して複雑な事柄を問題として理解し、答えのない問題に 解を見出していくための批判的、合理的な思考力をはじめとする認知的能力」の獲得をめ ざすにあたって、人文諸科学中もっとも有力な学問領域のひとつは明らかに心理学であろ う。 このような認識に立ち、広義の「こころの問題」の理解?解決を心理学に求める社会的 要請に応えるために、本学の建学の精神である「共生き（ともいき）」の理念を軸として、 人文学部人文学科心理学系を心理学科へと発展的に改組する。 - 1 - 東海学園大学人文学部は平成 12 年の設置以来、心理学を中心とした履修コース（発足時 の名称は「人間行動コース」、現在は「心理学系」）を設定し、入学者のおおよそ４割前 後が心理学系の履修コースを一貫して志望してきた。人文学部内の履修コースとしては比 較的充実した心理系科目を配置し、一定の水準を満たす心理学教育を実践してきた結果、 これまで人文学部心理学系は大学院進学者や心理系専門職就業者を含む多くの卒業生を輩 出してきた。新設する心理学科では、人文学部人文学科として発足した理念と教育的資源 を継承しつつ、こころと行動に関する専門的な心理学的知識と技能をより体系的に習得す る機会を提供する。さらに、社会的問題?心理臨床的現象の背景にある心理的要因を理解 し、分析し、それらの問題を解決する技術と能力を身につけるための、より高い水準の教 育実践を目的とするものである。 １－２．設置の必要性 人文学部人文学科内の履修コースとしてこれまで堅実な教育活動を行ってきた心理系部 門を独立させ、心理学科を設置する理由は以下に集約することができる。すなわち、心理 学志望者に見合う教育組織の充実と心理学の専門化及び細分化である。 (1)心理学志望者に見合う教育組織の充実 前述のように、これまで本学人文学部の入学者は約 4 割前後、時として半数近くが心理 学系志望者であった。これに対し、心理学を専門とする専任教員は平成 24 年度時点で人文 学部専任教員の約 2 割しかおらず、学生の教育需要を満たすという点で心理系教育組織を 増強する必要があった。学科として独立することによって、