冻结された三要因(升味).doc

PAGE 6 幕 藩 体 制 論 2002年4月19日 川　島　高　峰 ねらい 　幕藩体制の形成要因がすなわち崩壊の要因である。幕藩体制を西欧絶対主義国家の形成との対比から考察を試みてみよう。 絶対主義王制　　高校までの教科書で特徴として言われることを見ると下記の要素が指摘される。この各項目に超「封建性」を考えてみよう。 　　　　　　　　　　　　　　　　ポイントとなる視点 ?官僚制　　　　　　任用の特徴 ?常備軍　　　　　　戦士階層の特徴 ?重商主義　　　　国内外の市場独占 ?王権神授説　　より抽象化すると「神概念の独占」 　　仮に幕藩体制を日本型絶対王制と捉えたとき、その最大の特徴は、「鎖国」にある。 凍結された三要因(升味) 朝幕関係　　1615　禁中並公家諸法度 対外関係 　鎖国 外様大名　幕府官僚制の形成により統治機構から排除 力学の固定化（川島私見） 「戦争」　内戦、対外戦争ともにない 幕藩体制の根幹は戦士階層たる武士による非戦士階層の支配である。それはまた同時に幕府体制ではなく幕藩体制である。つまり、幕府と諸藩の連合国家である。日本全体としての政治主体、幕府と各藩という政治主体において組織間?組織内?組織外の政治力学を考えてみよう。さらにグローバルに見たときその秩序意識、意思決定と価値形成はどうであろうか？この視点を欠いたとき、政治学科として政治史を学ぶ意味は半減する。 １．幕藩体制の形成　　　　形成要因は崩壊要因となることがある。要するに支配形成の要因と支配維持の要因は異なる。 幕府による朝廷独占 ?武家官位制、大名家格と宮中官位を定式化　1651　 ?朱子学と五輪；君臣?父子?夫婦?兄弟?友人←抵抗権の論理（日本では下克上）の排除＋大政御委任 幕府官僚制による統治機構の独占＝大公儀権力；徳川門閥?譜代?旗本による権力の排他的独占 ?形成過程　　 ①家康；戦場の武将を家臣団とする→②秀忠；譜代家臣の官僚制化（←駿府大御所政治）→③家光；大公儀権力完成 ?大名の格式を複雑に序列化 徳川との遠近；御三家?一門?譜代?外様 官位 居城；国主?準国主?城主?城主格?無城 江戸城詰間；大廊下?大広間?溜め間?諦観の間?雁の間etc… 領地石高 鎖国；対外関係の独占、南蛮貿易の利益を独占 ＝究極の管理貿易体制、交易に限定、思想文化の移入を抑止 1613 伴天連追放令、信徒殺害約30万人 1635 日本人の出入国を禁止 1641 出島にオランダ人居住を限定 ２．幕藩体制の変容 　　 側近政治の台頭　　将軍専制の後退 ?④家綱；官僚制肥大、将軍の個人専制行使の手段として側近政治台頭 ?家綱、世子なく後嗣選定をめぐり門閥譜代と側近が対立、弟⑤綱吉が将軍に ?兄の門閥を打破、将軍専制、側近政治(非門閥からの抜擢)、官僚支配強化 ?1682 綱吉、側用人職導入；柳沢吉保 悪貨大量鋳造、生類憐の令、東北大凶作、江戸大火、富士噴火…………1709、世子なく死亡 ?⑥家宣、側近政治継承→⑦家継、4歳で将軍、1716、7歳で死去；側近、門閥対立深化 武家の非武士化、戦争なき時代の戦士階層 ?行政経験、財政の手腕で評価?昇進→身分によらざる職能による上下関係の登場 ?大名統制の能力的差別化；武士の官僚化、サラリーマン化 全国市場の形成と統制 ?17世紀後半；大阪を中心とした全国市場の成立 1619 南海航路　江戸－大阪 特権付与により大商人を通じ市場を支配 1671 東回り航路　江戸以北太平洋岸 1672 西廻り航路　日本海－下関－瀬戸内－大阪 ?米の石高増大、1592年；1846万石?1700前後；3040万石、投機対象としての米市場システム ?畑作物の多様化と商品作物増大→余剰米の換金率低下→「米価安の諸色高」、享保年間に1/4 吉宗時代 ?荻生徂徠『政談』(享保十二、1727？)　「旅宿の境遇」の拡大 小作農民増大と細民激増、武家の知行地との分離→「人を地に付ける」必要がある ※　兵農分離がさらに進行→城下集住、知行地往来の禁止、切取米の旗本、奉公人も譜代から出替へ 　　　　　　　　　　　　→戦わざる、耕さざる武士 ?享保の改革 人；門閥譜代の優遇と抜擢人事→足高制；役高?役料の支給、つまりは役職手当　家禄より高い役高の分を支給 金；米価対策として改鋳→失敗、1732、瀬戸内で蝗害、米相場の投機規制も失敗、結局、市場と自然の規制は困難 田沼時代；⑨家重、小姓より大名へ⑩家治、1767、側用人へ ?農村における質地地主と小作の分極化拡大 ?諸藩の「重商主義」による藩相互交易の拡大→大阪の地位低下 ※　西欧では、封建諸侯、都市国家間での交易拡大が関税をめぐる同盟形成