肝胆膵移植外科専門医養成概要.pdf

肝胆膵・移植外科 専門医養成ｺｰｽ 概要 肝胆膵・移植外科は，消化器外科の1 分野でしたが，専門性が高いことから，独立した診療科と なりました。手術は，肝葉切除，膵頭十二指腸切除，脳死・生体肝移植など高難易度手術が多く， 高度技能専門医制度がいち早く導入された分野でもあります。最近では，腹腔鏡手術も導入さ れ，低侵襲手術から 20 時間以上に及ぶ高難易度手術まで，多岐にわたる技術の習得が必要で す。この領域では，膵癌，胆管癌に代表される難治性の癌疾患が数多く存在し，外科的に未だ解 決されていない重要な課題も多く残されています。本研修課程では，癌外科の基本を修練するた め，後期研修では肝胆膵・移植外科のみならず，消化管外科，乳腺外科にも所属して腫瘍学に関 する幅広い修練を積み，肝胆膵外科医としての基盤を固める方針としています。肝胆膵・移植外 科は，体力，気力とともに情熱が大切な分野です。専門医育成コースでは，次世代のリーダーを 育てることを目標とし，温かく且つ厳しく指導していきます。近年，開腹手術に加えて，鏡視下， robotic 手術にも精通することも大切であり、トレーニング環境の充実にも力を入れていますが，研 修医および若手医師のトレーニングのため，ブラックボックスのみならず，バーチャルリアリティ内 視鏡手術トレーニングシミュレータをはじめとする，鏡視下手術トレーニング設備を導入していま す。また，血管外科手術トレーニングのためには，手術用顕微鏡も数台設置し，次世代を担う若 手外科医の育成に力を入れています。 当科の特色 膵・胆道癌：膵胆道癌の中でも，特に膵癌の手術では，世界的にも，「どこを如何に切除すれ ば治癒させることができるのか」に対して誰も解答を持っていませんでした。2001 年より金沢大 学全体として科を越えて，当科，放射線科，内科，病理の合同で，毎月「膵癌カンファレンス」を 行って症例を共有し，この難問に対峙してきました。その結果，膵癌の進展範囲が非常に精密 に診断できるようになり，その進展範囲に応じて切除をテーラーメイドに設定し，術後の QOL と 根治性の両立ができるようになっています。詳細は「画像と病理の対比から学ぶ膵癌診療アト ラス」（学研メディカル秀潤社）にまとめましたので，是非一読下さい。膵癌は時に大血管に及ん でいることもあり，手術は繊細な手技が求められ，長時間の手術となります。当科では熟練した スタッフによって，無輸血で手術は完遂されますが，術中もリラックスした雰囲気の中で，教科 書にはないコツや解剖を説明しながら，可能な箇所は研修医が執刀しスキルを高めています。 大変な手術ですが，スタッフは常に冷静沈着を心がけ，感情的になることはありません。 肝癌，肝移植：当科，消化器内科，放射線科，病理で「肝臓センター」を設立して，肝疾患の治 療にあたっています。「肝臓センター」では，最高水準の治療を提供するため，カンファレンスを 行って様々な面から病態を詳細に検討します。特に当科は外科治療を担当しますが，多数の肝 葉切除，生体肝移植を行っています。最近では脳死肝移植施設にも認定され，脳死肝移植も行 っております。肝移植手術では，肝切除の手技のみならず，血管外科の技術，知識が必須で す。生体肝移植を行っている施設は多数ありますが，単独の診療科のみで全てを行うことがで きる施設は多くありません。当科では20 余年に渡り，動物・基礎実験を行って重要な知見・技術 を蓄積してきましたが，これらは次世代に継承されるべき財産と考えています。 鏡視下手術：腹腔鏡手術の進歩には目覚ましいものがあり，当科でも良性胆道疾患，脾疾患 に行ってきましたが，最近は肝切除，膵切除手術に導入されています。また，Da Vinci Surgical System を使ったRobotic surgery の導入も間近です。 肝胆膵・移植外科専門医育成コースの特徴 専門医資格取得：最終的には「肝胆膵外科高度技能専門医」資格習得を目標としますが，先 ず外科学会専門医の資格を取得する必要があります。そのため研修コースでは，関連施設と の連携で心臓血管外科，呼吸器外科の症例経験を含め十分な症例を経験できるプログラムを 確立しております。近年女性医師も増加しており，女性医師のための環境整備も整っていま す。また，国内外学会への参加支援制度もありますので，学会では国内外の臨床研究者と議 論して戦いましょう。高い山に登るためには，それなりの準備と時間，努力が必要です。全人的