「技能外国人安定雇用制度」 創設の提言.PDF

（公益財団法人 日本国際交流センター(JCIE) 「技能外国人安定雇用制度」 創設の提言 2014 年10 月29 日 目次 １．提言の必要性 1 １）なぜ提言を行う必要性があるのか？ 1 ２）「外国人技能実習制度」の適正な運用は可能なのか。 2 ３）「技能外国人安定雇用制度」（仮称）構想の提案 3 ２．「技能外国人安定雇用制度」の主要内容 3 １）制度の目的 3 ２）基本方針と、必要な視点 4 ３）新制度の具体的内容 4 （１）法制度の整備 4 （２）新制度の具体的な仕組み 7 ４）日本社会との関係 12 「技能外国人安定雇用制度」創設の提言 １．提言の必要性 １）なぜ提言を行う必要性があるのか？ 日本では、1980 年代半ば以来、外国人の受け入れの是非をめぐる議論が繰り返され てきた。2014 年現在も、外国人・移民の受け入れをめぐる論争がマスコミなどを通じ て活発になっている。 1980 年代末が中小製造業や建設業を中心とした人手不足の深刻化による「外国人労 働者」の受け入れ議論であったのに対して、2014 年の現在は人口減少、少子高齢化の 進展に伴い、人口政策としての外国人の受け入れが提案され、外国人受け入れをめぐる 議論が「移民」という観点からも論じ始められているという特徴がある。 一方、これまで、日系人をはじめとする外国人の流入により、在住外国人数が急増し、 彼らの定住化、多様化が進展したことから、「多文化共生」を掲げた自治体や、草のレ ベルの団体の取り組みが進められ、外国人に対する支援・共生体制が一定程度整ってき ている。 そうした中、日本政府は、2014 年6 月24 日に閣議決定された「経済財政運営と改革 の基本方針 2014」において、外国の高度人材や、留学生の活躍しやすい環境の整備、 実習期間の延長等の技能実習制度の拡充、女性の活躍推進のための外国人家事労働者の 受け入れを掲げた。2014 年8 月13 日には、復興事業と、東京五輪に向けたインフラ整 備等による一時的な建設需要の増大に対応するものとして、建設分野技能実習修了者を 「外国人建設就労者」として受け入れ、建設分野に就労させる「外国人建設就労者受入 事業に関する告示」を出した。 ただ、外国人の受け入れ拡大とみられるこれらの施策に対して、日本政府は「移民政 策ではない」としている。こうした日本政府の態度には、人口減少の深刻さや地域レベ ルでの多文化共生についての進展にも関わらず、日本における「移民」、「外国人労働者 の受け入れ」という言葉に対するアレルギーともいうべき現象が現れていよう。 しかし、「移民」、「外国人の受け入れ」に対する議論をタブー視するのは、すでに地 域で進展している外国人の定住化、多様化、そして彼らを地域の構成員として受け入れ ようとする努力・取り組みを阻害しかねない。また、国レベルで外国人にかかわる政策・ 制度の共通基盤・仕組みが形成されない限り、地域レベルの有意義な取り組みやアイデ ア、協力関係は生かされない。 そして、日本政府が拡大させようとする技能実習制度は、その趣旨がそもそも発展途 上国に対する技術移転であることから、日本の国内のニーズの変化に対応するために活 1 用されるべきものではない。技能実習修了者を「日本の建設需要に適確に対応する」た めに「即戦力」として活用するという論理の下で、新たに「一時的な緊急措置」として 実施される外国人建設就業者の受け入れは、日本政府自らが「技能移転」の制度目的を おざなりにすることにほかならない。また、外国人技能実習制度の拡大及び一時的な活 用という動きは、その場しのぎ的な「穴埋め」に過ぎず、恒常的な人手不足に悩む産業・ 職種の存在や、少子高齢化による中長期的な若年労働力の不足といった日本産業・社会 が抱えている構造的な問題の本質から遠ざかってしまうものである。 以上のことから、日本の外国人・移民の受け入れをめぐる環境は転換点にきており、 外国人の受け入れ問題を国全体として真剣に議論すべき時期にきていると考える。そし て、