第9章来日外国人犯罪.PDFVIP

第９章 来日外国人犯罪 本章では、来日外国人犯罪について考察していく。なお、ここでは「来日外国人」を「警 察庁の統計の定義により、我が国にいる外国人のうち、いわゆる定着居住者（永住権を有 する者等）、在日米軍関係者及び在留資格不明の者以外の者をいう」という『犯罪白書（平 成 16 年版）』（72 頁）に準拠して用いる。もちろん、調査項目では「来日外国人」として あるだけで、上記の概念規定がなされているわけではないが、人々の意識にあっても、ほ ぼこの概念規定と一致するものと思われる。 １．『犯罪白書』から見る来日外国人犯罪 まずは、『犯罪白書（平成16 年版）』（70-84 頁）から、近年の来日外国人犯罪の動向を 見ていくことにする。 （１）外国人出入国の状況 平成 15 年の外国人新規入国者数は 463 万強である。うち、観光等を目的とする短期滞 在が 91.9％と、そのほとんどを占めている。 我が国に在留する外国人のうち、不法残留者の数（推計値）は、平成 16 年１月１日現 在で、ほぼ 22 万人にのぼっている。これを国籍別（出身地）別に見ると、推計値に基づ くものではあるが、韓国が22％、中国が 15％、フィリピンが 14％となっており、中国の 増加（対前年同日比 13.0％増）が目立っている。 （２）来日外国人による犯罪の動向 来日外国人による一般刑法犯 （道路上の交通事故に係る危険運転致死傷を除く。）の平成 15 年の検挙件数は 27,258 件、検挙人員は 8,725 人で、いずれも昭和 55 年以降最多とな っている。 また、来日外国人による特別法犯（交通関係法令違反その他の交通法例違反を除く。）の 平成 15 年の検挙件数は 13,357 件、検挙人員は 11,282 人で、これまたいずれも昭和 55 年 以降最多となっている。 これを罪種別に見てみると、窃盗は平成 15 年 22,830 件で、過去最多である。強盗は平 成 15 年 255 件で、これまた過去最多である。 （３）平成16 年の動向 ところが、平成 16 年では、さらに外国人犯罪の動向が悪化していることがうかがえる。 以下は毎日新聞に掲載された速報データの記事であるが、そこから悪化を読み取ることが できる。 「昨年１年間に検挙された来日外国人の刑法犯は３万 2083 件、8898 人と、過去最 多だった前年を 4825 件（17％）、173 人（２％）上回り、ともに過去最多を更新した ことが警察庁のまとめで分かった。クレジットカード偽造をはじめとした知能犯の増 796 件、563 人。前年から 68 件(10％)、66 人 加が目立っている。」「知能犯の検挙は （ 13％）増え、３年連続の増加となった。このうち偽造犯は 538 件、380 人（前年比 77 件、37 人増）で、知能犯全体の７割近くを占めた。」「警察庁の分析では、共犯率 2005 が７割と日本人よりも高く、特に４人組以上による事件が目立つ。」（毎日新聞、 年２月 24 日 夕刊 10 面） 以上のような来日外国人犯罪の状況にあって、人々はどのように考えているのか、また 認識しているのか、気になるところである。そこで、現時点で緊急の課題となっている犯 罪関連問題として、今回の調査では、少年非行とともに来日外国人犯罪を取り上げた。た だし、調査項目はごくごく少なくした。 ２．来日外国人からの犯罪被害 「あなた、あるいは同居の家族のだれかが、この１年間に、次の人から犯罪の被害（交 通事故を除く）を受けたことがありますか」と尋ね、「暴力団」「来日外国人」「少年」「そ の他」の４選択肢で答えてもらった。もとより、どのような相手に被害に遭ったかは、き わめて判断しづらいことである。加害者が特定し得る事件のほうがかえって希であろう。 それ故、案の定、どの回答も数値は低く、「来日外国人」との回答はわずかに８名、0.4％ であった。残念ながら、この数値は分析に耐えうるものではない。 ３．来日外国人犯罪の動向 （１）全体と性別分析 来日外国人犯罪は統計データでは、前記のとおり、増えている