永田和宏NagataKazuhiro-日本学术振兴会.PDF

平成１５年度採択分 平成２０年３月３１日現在 炭素ガス排出抑制型低温高酸素ポテンシャル高速新製銑法 の開発 Development of new process for rapid pig iron making in high oxygen potential at low temperature in order to reduce carbon dioxide gas emission 永田 和宏 （Nagata Kazuhiro） 東京工業大学・大学院理工学研究科・教授 研究の概要 銑鉄製造で原料の加熱と反応に消費されるエネルギーを、高炉の石炭燃焼による高温ガス からマイクロ波に転換させた。マイクロ波は粉状の鉄鉱石と炭材に効率良く吸収されるこ とを示た。約5 分で 1360℃の銑鉄が出来、不純物濃度は高炉銑の 10 分の１程度であった。 マイクロ波吸収の少ない断熱材を用い連続製銑炉で 1 時間に約 500g の生産に成功した。 研 究 分 野：工学 科研費の分科・細目 ：材料工学・金属生産工学 キ ー ワ ー ド ：鉄鉱石 、還元、銑鉄、マイクロ波加熱、低温製鉄、炭材内装ペレット １．研究開始当初の背景・動機 走査型トンネル顕微鏡（STM）で観察した。 炭酸ガス排出抑制は地球温暖化防止の上 マグネタイトなど原料や各種耐火物の誘 で重要な課題である。銑鉄を製造する高炉 電率と透磁率を室温で測定した。 では原料の加熱と反応に消費されるエネル 小型マイクロ波加熱装置(購入) を用いて ギーを石炭燃焼による高温ガスで得ている。 窒素ガス中で炭材内装ペレットを反応させ、 このため、通気性を保つために強度のある 銑鉄生成速度に及ぼすマイクロ波出力、原 塊鉄鉱石やコークスを使う必要があり、反 料の粒径、原料の重量の影響を研究した。 応に時間がかかる。加えて、還元力が強い 反応途中の炭材内装ペレットを急冷し、 ため不純物の多い銑鉄ができる。原料価格 内部の反応状況を電子線マイクロプローブ の高騰、品質低下など現在の鉄鋼製造の抱 アナライザ（購入）で測定した。 えている問題を早急に解決する必要がある。 12.5kW マイクロ波加熱装置で、連続製 銑実験を行ない、シーケンシャル形蛍光Ｘ ２．研究の目的 線分析装置(購入) で原料や生成物の分析を これらの問題を一気に解決するために、 行った。 エネルギーをマイクロ波に代え、粉状の原 料を使い、弱い還元力で純度の高い銑鉄を ４．研究の主な成果 製造する方法を確立する。粉は体積に対し 表面積が大きいので還元反応が速く進行す 4.1 たたら製鉄の技術論 る。マイクロ波は電磁波なので通気性を必 たたら製鉄は 6 世紀の後半に朝鮮半島を 要とせず粉原料を使える。 経て我国に伝来した製鉄法である。高さ 1.2m の箱型の炉で砂鉄を原料に木炭を燃 ３．研究の方法