植物群落-和歌山県ホームページ.PDFVIP

９ 　 Red Data Book of Wakayama Prefecture 落 群 物 植 植物群落の概要 １．和歌山県の植生と植物群落について ある場所に集まって生活する生き物の全体のうち、植物だけを取り出したものを植物 群落といい、ある地域に面的な広がりを持って生活する植物の全体を植生という。ここ でいう植生とは、周囲の環境が持つ有機的もしくは無機的条件に対し、従属的もしくは 連続的に生活しているものをいう。 温暖な気候と豊富な降水量に恵まれた本県において、県土を余すことなく被覆する植 物群落は、菌類や微生物との相互作用によって土壌を培い、魚類や甲殻類といった水生 動物、昆虫や小動物等の陸上動物に対し生息環境を提供し、すべての生き物の命と命の 有機的なつながり、すなわち生態系を支える基盤となるものである。また、植物群落と は、群落を構成する植物種の共通性や均一性をもって段階的に分類されるものであり、 森・川・里・海といった立地条件に成立する自然資質の相観を決定づけるものである。 植物群落の連続的なつながりをもって決定される植生とは、その地域の気候的条件、 地形・地質条件を反映しながら発達した自然植生と、その地域に住む人々の農林業的利 用にともなう植生管理によって発生する人為撹乱を受容しながら形成された半自然植生 に二分される。 第二次世界大戦の終結から国土復興へと発展を遂げた現代の間に繰り広げられた資源 転換、薪炭から石油への燃料革命、木材から鉄、コンクリートへの資材転換という大き な資源転換期を経て、これまでに人間活動が自然に与えてきた行為は、緩やかな攪乱か ら改変へと急速に変化し、我々が今、視覚的に理解できる現存植生とは、本来、連続的 なつながりを持って生育していた自然植生が、人為によって分断化されたものである。 また、農山村地域の高齢化と人口減少の結果、地域社会の抱える問題を深刻化させ、遊 休農地の増加、火入れ、草刈り、間伐といった植生管理の頻度低下をもたらし、人と自 然の関わりによって保持されてきた里域の半自然植生が変容しつつある。 この概説は、既報の文献情報に筆者らの見解を加味し、森林、地形・地質、水環境と いう産業基盤としても重要な3つの環境構成要素の視点に立ち、和歌山県において特筆 される植物群落と植生、その現状と保護・保全対策について述べるものである。 （１）森林植生 本県の旧国名を表す「紀伊」「紀州」は、古くから「木の国」とも呼ばれ、紀伊山地 は林業利用に供された古い歴史を持つ。低標高域から高標高域へと拡大した植林活動に 伴い、県土面積に対する森林面積の割合は77％、森林面積に対する人工林面積の割合は 落 群 物 植 61％に達し、その森林景観からは本来の森林植生の姿を推定することが難しい。国有 林、民有林を含む保安林、天然記念物指定の森林、土地所有者の理解により保存された 民有林、渓谷や峡谷に聳える懸崖の植林不適地等、皆伐を免れ残存する天然林は、水源 涵養機