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大阪府立成人病センター整形外科受診患者の皆様へ 高度先進医療（骨軟部腫瘍の遺伝子診断）のご案内 当科は骨や軟部組織（筋肉や脂肪、関節など）にできるできもの（骨軟部腫 瘍といいます）を治療する専門科です．骨軟部腫瘍は非常に稀な病気で、さら に病気の種類が 100 個以上と非常に多く、診断と治療において高度な専門性が 必要とされる病気です． 当科では、以前より「骨軟部腫瘍の遺伝子診断」を行って、診断精度の向上 に努めてきましたが、平成 16 年 9 月 1 日より、この技術が高度先進医療として 厚生労働省に認可されました．このパン フレットは「骨軟部腫瘍の遺伝子診断」 についての説明です．御不明な点や、御意見があれば何なりと当科医師にご質 問下さい． １．細胞とは？ 人体は、約 65 兆個の細胞と、その細胞を取り巻く環境（細胞間器質）から成 り立っています．一個一個の細胞は生きていて、分裂して２個に増えたり、い ろいろなタンパク質を産生したり、互いに連絡を取り合って生命活動を維持し ています．細胞をとりまく環境（細胞間器質）はちょうど私たちのまわりにあ る服や空気や家や机や電車のように、その細胞が生きていくのに都合の良い物 質で満たされています． 人体にある約 65 兆個の細胞は、ちょうど地球上の人間社会のように、その分 布や働きに違いがあります．細胞が集団で特定の役割を果たしている部位が「臓 器」や「組織」であり、いろいろな物質を加工したり産生したりする工場のよ うな肝臓、ちょうど人や物が動く道路のような血管、酸素を取り込む肺、栄養 を吸収する消化管、ホルモンを産生する甲状腺、手足を動かす筋肉など、様々 な部位で、様々な働きをする臓器や組織があります．そして各組織の細胞は、 細胞の中の「核」といわれる箱に、それぞれの使命を書いた設計図である遺伝 子を持っています．遺伝子という設計図に従って、細胞は分裂して数を増やし たり、特定のタンパク質を作ったり、あるいは血管というホースを作ったり、 筋肉を作ったりします．そして、人体が外の環境に対して適応できるように、 古くなった細胞は死滅し、新しい細胞が生まれて、細胞間器質が一定の恒常性 を保つように設計されています． ２．腫瘍はなぜできるのか？ 腫瘍は、細胞の設計図である遺伝子に異常が生じて、細胞が必要の無い無制 御な増殖を続けた結果、異常な細胞のかたまりとして発生します． ３．なぜ遺伝子の異常が生じるのか？ 組織ではその恒 常性を保つため、古くなった細胞は死滅し、新しい細胞が生 まれてきます．新しい細胞は、いろいろな臓器の細胞に分化していくことがで きる幹細胞といわれる細胞から分裂して発生します．ちょうど女王蜂がたくさ んの子供を産めるのと同様に、たくさんの臓器の細胞がこれから生まれます． そして、生まれた細胞は筋肉や神経や脂肪や血管などへ分化（特殊な働きをす るように変化すること）しながら、幾度となく分裂して、古い細胞と置き換わ り、せっせと働いた後、その細胞自身が古くなり、後進へ道を譲ることになり ます．このような新陳代謝のサイクルは臓器によって異なりますが、細胞の種 類によって、4～5 日ごとに交換されるものもあれば、3～6 週間で交換されるも のもあります．人体の細胞は約 65 兆個ありますから、人体が日常行っている細 胞分裂の数はおびただしい数であり、その分裂ごとに遺伝子はコピーされるこ とになります． さて、人の遺伝子の個数は約 22000 個程度ということが最近わかりました． あなたは22000 頁の設計図を数時間のうちに間違いなくコピーすることができ るでしょうか？ よほどの人でなければ、白紙の頁を挟んだり、上下が逆にな ったりと間違いを起こしてしまいます．細胞も同じで、分裂するときに、遺伝 子のコピー間違いを起こすことは、ある確率で当然生じます．つまり、細胞の 個数とそれが分裂する頻度から言えば、遺伝子の異常は起きて当たり前の状況 なのです．しかし、人体には、大事な遺伝子のコピーを失敗した場合には、細 胞そのものが死滅してしまう仕組みもあります．また、失敗したコピーを修復 するための設計図もちゃんと用意されています．このようにコピーに失敗した 異常な遺伝子を修復する手だてもきちんと講じられてはいますが、それでもな お、異常の起きる数が多くて多様なため、そのシステムをかいくぐって生き延 びる細胞が出てきます．