磁气粘性流体MRブレーキ.PDF

MR 第 3 章 磁気粘性流体 （ ）ブレーキ 3.1 本章の概要 第 2 章では可変粘弾性関節の弾性要素として軸方向繊維強化型人工筋肉の特性を明らかにし， 力学的平衡モデルによる制御を可能にした．そこで本章では，もう一つの構成要素である可変粘 性要素として MR 流体を扱う． 本 MR 流体は磁場を与えることで見かけの粘性が可逆的かつ高速に変化する機能性流体であ (1),(2) る ．そのため，本流体を封入した MR ブレーキは，発生した運動エネルギを任意に消散させ ることができる．このような特徴から MR 流体に関する応用例は多く，減衰力可変ダンパやク (3)-(5) ラッチ，力覚提示装置などにも使用されている ． 特に著者らは，本流体を使用したデバイスが構造的に粘性特性を有し，応答速度が空気圧ゴム 人工筋肉に比べ早い点に着目した．構造的な粘性特性は突発的な外力に対して有効であり，マニ ピュレータアームの振動を抑えることができる．また，応答の速さから，人工筋肉の柔軟性や空 気圧応答の遅れに起因する振動の抑制にも有効であると考える． そこで，本研究ではマニピュレータの関節部に MR ブレーキを組み込むが，制御を行うために はMR ブレーキの出力特性を把握することは必要不可欠である．そのため本章では，MR ブレー キの出力特性を実験的に調査し，数式モデルで表す．本モデルは関節に組み込んだ MR ブレー キを制御する際に，コントローラの基礎となる． 3.2 機能性流体について 3.2.1 機能性流体の種類 機能性流体は電場や磁場などの外部刺激によって特性を変化させる流体である．主な流体と しては，ER （Electro-Rheological）流体，EHD （Electro-Hydro-Dynamic）流体，EC （Electro-Conjugate- Fluid），液晶， MR （Magneto-Rheological）流体，磁性流体などがある(6),(7) ．ここで，本研究で は可変粘弾性関節の粘性要素として用いるため，粘性特性が変化する機能性流体について述べ る．そのため，候補としては電場によって見かけの粘性が変化するER 流体と磁場によって見か けの粘性が変化する MR 流体が挙げられる．ER 流体には均一系と分散系があり，分散系の ER 流体と MR 流体は，電磁場の印加によって可変な降伏応力を持つビンガム流体として振舞う． 一方均一系の ER 流体は有意な降伏応力を持たず，電場の印加によってせん断速度に対するせん (6) 断応力の増加率が変化する ．ここで，マニピュレータの開発にあたり著者らが可変粘性要素に 求める要件として， 人工筋肉に比べて高い応答性を有し，振動などに対応できること 41 粘性のみでなく，摩擦要素としても扱えること デバイスに応用した際，小型，軽量化が容易であること が挙げられる． まず，応答速度については ER 流体が数ミリ秒オーダーであるのに対し，MR 流体は数十ミリ 秒オーダーである．一方で，本研究で使用する人工筋肉の応答は数百ミリ秒オーダーであるため， どちらの流体も応答性についての要件を満たしていると考える． 次に，摩擦要素としての利用について述べる．一般的な粘性ダンパであれば，小さな力でも低 速で動き出す．しかし，著者らはマニピュレータの利用に際し，関節を人工筋肉によらず摩擦ブ レーキのような機構で保持することを考えた．これにより作業中の振動を低減させたり，より正 確な作業ができると考えた．この点については，降伏応力のある分散系の ER 流体か，MR 流体 が望ましいと考える． そして，それぞれの流体を可変粘性デバイスに応用し，マニピュレータの関節部に組み込む際 は小型・軽量なデバイスが求められる．これは，多リンクマニピュレータにおいては関節部も運 動するためであり，アームのイナーシャを抑える狙いがある．この点については，分散系の ER 流体とくらべて MR 流体の最大