环境保健菅原先生担当分.DOC

衛生学-環境保健 - page \* MERGEFORMAT1 - 環境保健 (菅原先生担当分) １，ダイオキシンについて（環境ホルモンの代表例として） 　環境ホルモン(内分泌障害性化学物質、内分泌攪乱物質などとも言われる)は、生体内ホルモンバランスを崩す外因性の物質である。 　ダイオキシンは環境ホルモンの代表例であり、本来はPCDDのみを指すが、ダイオキシン類対策特別措置法においては、PCDD及びPCDFにコプラナーPCBを含めて“ダイオキシン類”と定義されている。 　ダイオキシンには異性体が存在し、PCDDは75種類、PCDFは135種類、コプラナーPCBは十数種類の異性体が存在する。これらの異性体は、毒性の強さがそれぞれ異なっているため、ダイオキシン類の中で最も毒性の強い2,3,7,8-TCDDの毒性を1として他のダイオキシン類の毒性の強さを換算した係数(毒性等価係数：TEF)がダイオキシン類の毒性を表す際に使用される。また、環境中には1種類だけでなく多種のダイオキシン類が存在するため、この混合物の毒性を表す値として、各々のTEFに存在量を乗じ全て足し合わせた値(毒性等量：TEQ)が用いられる。ダイオキシン特別措置法においては、ダイオキシン類の耐容一日摂取量(TDI)は4 pg-TEQ/kgとされている。 　ダイオキシンの現在の主な発生源は廃棄物の焼却による燃焼であり、高温で焼却することでダイオキシンの発生を抑えることが可能である。その他、製鋼用電気炉、たばこの煙、自動車排出ガスなど様々な発生源がある。 　ダイオキシンは消化管からの吸収率が高い(70～90%)ため、食事から摂取されることが多く、呼吸などによって取り込む量は少ない。ダイオキシンは脂肪組織に溶けやすく残留しやすいため、魚介類、肉、乳製品、卵などに多く含まれる。日本においては食文化のため、魚介類からの取り込みが最も多い。ダイオキシンはその脂溶性から、体内、特に脂肪組織に蓄積されやすく、生物学的半減期(BHL：体内に取り込んだ量の半分が排泄されるのにかかる時間)は約7年と言われている。 　ダイオキシンの毒性については、動物実験では急性毒性、生殖毒性(精子数?運動能低下、子宮内膜症の増加)、催奇形性(水腎症、口蓋裂)、免疫毒性(胸腺萎縮、寄生虫排除の遅れ)、発ガン性などの多様な毒性が報告されているが、ヒトにおける毒性については十分に解明されていない。この毒性の機序としては、細胞質内に存在するAhレセプター（Aryl hydrocarbon receptor）と結合することでAhレセプターがARNT(Ah Receptor Nuclear Trans-locator)と結合して活性化され、DRE(Dioxin Response Element)というDNA配列と結合することで蛋白合成がおき、毒性が発現すると考えられている。 ☆まとめ☆　　　 ?環境ホルモン(内分泌障害性化学物質)の一例として、ダイオキシンが挙げられる ?ダイオキシンには異性体が存在し、これらの毒性は2,3,7,8-TCDDの毒性を1とした相対的な値(TEF)や、TFEに存在量を乗じ全て加算したTEQを用いて表す。 ?ダイオキシンは主に廃棄物焼却によって発生し、これは高温焼却で抑制可能。 ?ダイオキシンは脂溶性で消化管からの吸収率が高く、日本人では魚介類からの摂取量が多い。摂取したダイオキシンは主に脂肪組織に蓄積する。 ?ダイオキシンの毒性は、急性毒性、生殖毒性、催奇形性、免疫毒性、発癌性など多岐にわたる。この機序としては、細胞内Ahレセプターとの結合→AhレセプターとARNTの結合→DREに結合→蛋白合成、という機序が考えられている。 ２，水俣病とメチル水銀について ①水俣病について 　水俣病は、化学工場から海や河川に排出されたメチル水銀化合物が蓄積した魚介類を日常的に摂取した人に起こった中毒性の神経疾患である。熊本県水俣湾周辺(第一水俣病)、新潟県阿賀野川流域(第二水俣病)において起こった。 　発生当初は、水俣湾の魚介類の摂取により水俣病が起こることは分かったものの、有機水銀を正確に測定する技術が無かったこともあり、セレンやタリウム等が原因ではないかと言われていた。しかし、研究班(熊本大学水俣奇病研究班)が有機水銀中毒の典型症状であるハンター?ラッセル症候群と水俣病の臨床症状が酷似していることに気づき、水俣病はメチル水銀中毒によるものであることが判明した。 　このハンター?ラッセル症候群とは低級アルキル水銀(メチル水銀など)の慢性中毒による症状で、①求心性視野狭窄、②知覚障害、③小脳性失調症を中核とし、重症例では精神症状を示すものである。 　水俣病の患者は、実際には昭和21年(1946年)に最初の