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抗がん剤(ドキシル)投与中における重篤な肺炎発症を回避するための方策
09/10/29
抗がん剤投与の目的
抗がん剤投与の目的が治癒、延命、症状のコントロール、緩和のいずれかを認識すべき。
目的により、抗がん剤のdose down、G-CSFの予防的投与、あるいは入院管理の必要性などが異なってくる。
治癒を目的とした症例、リスク因子をもつ患者に対してはG-CSFの予防投与も考慮されよう。
卵巣がん術後3年数か月再発、2nd レジメンのRECIST:SD(-6.7%)加えて、合併症の悪化により1年弱、中断し、その間、新病変出現した症例に対して行う3rdレジメンの位置付けを考える必要がある。
過去に投与された抗がん剤の量、初回治療か否か、初回治療でない場合、前コースにおける好中球減少の有無、発熱の有無などを考慮する必要がある。
これらにより、抗がん剤の用量の減量、治療スケジュールの変更、あるいはG-CSFの二次予防投与を考慮する。
発熱性好中球減少症(febrile neutropenia)に対する対応
FN時における起炎菌の同定は低いことを認識すべき
起炎菌の同定及び感染巣の同定は10%程度にとどまる(Clin.Infect Dis 2004;39:59)。
以上より、FNの場合2セットの血液培養を行うと同時に抗生剤投与を開始する。
低リスクにはキノロン系
高リスクにはカルバぺネム等
高リスク、低リスクの判定はMASCCのスコアを参照
MASCC(The Multinational Association of Supportive Care in Cancer Risk Index)スコア の症状スケール
リスクインデックススコア21以上はLow Riskとする
特性
スコア
臨床症状の経過が良好(*)
無症状
症状が軽度
症状が中等度
?
5
5
3
血圧低下がないこと
5
COPD(慢性閉塞性肺疾患)がない
4
固形癌、または真菌感染症の既往歴のない造血器腫瘍
4
脱水症状なし
3
発熱時に外来管理
3
年齢<60歳
2
Ref: Klastersky J, et al.:J Clin Oncol 2000; 18:3038-51
?
医療施設により抗生剤の感受性パターンが異なることを認識、主治医全てが当該施設の抗菌剤感受性パターンを把握、入院中の患者さんに対応する必要がある。
肺炎を発症した際の対応
肺炎関連検査所見
インフルエンザA,B抗原ともに(-)、マイコプラズマ抗体(-)、尿中肺炎球菌抗原(-)、
サイトメガロウイルス抗原(-)、β-D-グルカン(-)、クリプトコッカス抗体(-)、
肺サーファクタントプロテインD(SP-D):71.4(<110.0)、KL-6:207(<500)
吸引痰;培養陰性、Ziehl-Neelsen 法陰性
各種自己抗体いずれも陰性
肺胞洗浄液;
培養にてS.epidermidis 1+、Candida albicans 1+、Ziehl-Neelsen 法陰性、
細胞診:炎症細胞の主体はリンパ球、悪性なし
Grocott染色にてPneumocystis carinii(-)、PAS染色陰性
Pneumocystis carinii DNA(-)
菌培養が陰性と言って、細菌性肺炎を否定する理由にはならない
【細菌性肺炎を示唆する所見】
プロカルシトニン強陽性、骨髄抑制(好中球減少)が遷延していた点
【薬剤性肺炎を示唆する所見】
肺胞洗浄液:炎症細胞がリンパ球優位、ステロイドパルス療法が著効した点
肺炎に対する内科見解
肺炎の原因については、骨髄抑制の遷延およびプロカルシトニン高値であったことからsepsisによるARDSと、それに加えてステロイドが著効したことからドキシルによる薬剤性肺炎の要素が関連していたのではないかと考えられる。
間質性肺炎(薬剤性肺炎)の診断について
<理学所見>
胸部聴診音で、パチパチという捻髪音 fine crackle。
<単純X線および胸部CT>
すりガラス様陰影 ground-glass opacityが特徴的。進行すると線維化を反映して蜂巣状を呈する。
?10%近い間質性肺炎患者の胸部レントゲンは正常所見。
?胸部レントゲンの変化は、病気の実際の進行度合いと必ずしも相関しない。
<呼吸生理学検査>
%肺活量、一秒率、DLCO(一酸化炭素拡散能)の低下。
<血液検査>
特異性が高いのは、SP-A、SP-D、KL-6の上昇。活動度の判定や治療効果の判定に信頼性が高い。KL-6がもっとも感度?特異度にすぐれている。
KL-6: 500U/ml以下が正常。
SP-A(肺サーファクタントプロテインA):43
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