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川端康成の作品における悲劇的な美意識について
――『伊豆の踊り子』を中心に
何園園
序論
日本の文学作品を読むたびに、美しい文体と純真な愛情などによく引き付けられる。川端康成の作品もそうである。川端氏の作品がその特有な悲劇的な美意識に深く結び付いて、、人の心を震撼させる。氏の早期作品は下層女性を小説主人公として、彼女たちの清らかな心と不幸な体験を描くものとする。名をあげた作品『伊豆の踊り子』もそのような作品である。その作品は、作者二十歳時の実際の体験に基づいて書かれたものである。伊豆の旅に出た一高生は道連れとなった十四歳の踊り子への思慕が書き続けられているようだが、踊り子を愛するというより、他人から『いい人だ』と、愛されることに対する感謝を持ってこれを書いたと、作者は言うが、それは氏が『孤児根性』という精神病患からの快癒への感謝なのであり、また、青春の甘い感傷を歌い上げた青春文学でもある。
私は『伊豆の踊り子』を読んでいるうちに、作品における美意識、特に悲劇的な美意識に深く感動する。感動するとともに、川端氏がどのように純真な愛で孤児根性から脱するかとか、作品の中における悲しみと美しさはどのように表されるかとか、幾つかの質問が出てくる。それで、本文はそれらの質問をめぐって、『伊豆の踊り子』を中心に、他の作品にもちょっと触れてみて、川端文学特有の悲劇的な美意識について検討してみようと思う。
本論
一:川端の作品における悲劇的な美意識の根源
1:不幸な生活経験
1.1:幼年から天涯孤独の出身
川端康成は明治三二年六月一四日(一八九九年)に、大阪に父栄吉、母げんの長男として生まれた。数え年二歳の時父が、三歳の時に母が死に、孤児となった彼は祖父母と共に大阪府下三島郡へ転居し、祖父母に養育された。川端氏はみずから虚弱な体質で、祖父母の過保護で毎日家に閉じ込まれていた。外の世界とまったく接触していなかった氏は小学校を入学した前に祖父母以外、別の世界があるとは知らなかった。七歳の時に祖母が、十歳の時には姉が死んだ。その後、年寄りの祖父と二人で肩を寄せ合うようにして生きていた。祖父は失明で、耳も遠かった。一日中涙を流した。これは、氏の幼年の生活に暗い影を投げかけた。そして、十五歳の時に祖父が死んだ。川端康成は孤児、まったく天涯孤独の身の上となった。
川端氏にとって、幼時から肉親の死につぎつぎと出会い、人々から葬式に参加する名人と言われた。氏の幼年期には人間の温かさを感じていなかったばかりか、逆に心の奥底に克服できない憂鬱と悲しみが滲み込んでいた。常に死と向き合って生きてきた川端氏には、社会と現実的にかかめるというより、人間の存在が根底から冷たく見えた。同時に一方では美しい抒情の世界にあこがれるという二様の心的傾向が表裏をなして同居した。
1.2:愛情から傷つけられる心
川端康成が孤児で、この世界でどこからも必要とされない人間であったことも一層その傾向を強め、孤独な人間存在と、その中で一瞬きらめく純粋な愛情とを敏感に感じ取る目がみがかれていた。
実は、川端氏はおとなになってから、相次いで伊豆の踊り子千代(『伊豆の踊り子』の中に薫という名の踊り子の原形である)と本郷の伊藤初代と出会った。
川端氏は伊豆半島に旅行するときに伊豆の踊り子千代と出会った。初めて踊り子から平等に対処された川端氏は踊り子への愛情が生まれた。二人は純粋で、心のこもった感情を味わった。
伊藤初代との出会いは東京のコーヒー店のことであった。恋に落ちる二人はすぐ婚約した。だが、まもなく、伊藤は『非常的な状況』で、婚約を一方的に破棄した。大変裏切られた川端氏の心は傷痕だらけであった。
それから、劣等感をもった川端氏は二度と女性に告白する勇気がなかった、その上、重苦しい気分に落ちて、天命を信じて生きてきたのである。
以上の生活経験は川端康成が作品における悲劇性の原因の一つだと思う。
2:日本伝統文化の影響
日本は島国で、季節風帯に当たる。季節の変化のリズムも活躍している。緑の山、清らかな水、風光明媚で、温和な気候は日本人の心を育ててくれた。そのため、日本は自然崇拝の民族であると同時に、審美に陶酔する民族でもある。日本人の生活で、心なしの山、川、草、木、花、月さえも感情をこめて、愛を託して対処される。川端康成にとって、失明の祖父と一年中話合わなく生きていた、結果は、わずかなものでも川端氏の興味を呼びかけることができる。
仏教の禅宗を崇拝する日本人
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