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論文の書き方 ～Ｍ１院生のために～ 経営学研究科 はじめに よい論文を書くためには、きちんとした「研究方法」をふまえる必要があります。本来この問題を 考えるうえでは科学方法論について厳密に考える必要があるのですが、大学院前期課程段階では、必 ずしもそこまで深めなくても論文を書くことはできるでしょう。そこで、ここではまずテーマ設定の 方法から、具体的に研究をすすめるための技法を説明します。また、論文作成の基本的なルールにつ いても示します。その前に、あらかじめそもそも研究とは何かについてふれておくことにします。 もちろん、研究の方法は多様ですので、まずは修士論文指導担当の教員とよく相談し、その指導に 従ってください。その意味ではこの文書はあくまでガイドライン例ですが、参考になれば幸いです。 １．「研究」とは (1)「研究」とは何か 「研究」とは、「客観的な根拠に基づいて何かを解明すること」です。 「客観的な根拠」とは事実やすでに認められた理論、および整合性のある論理です。 「何か」とは新しい事実や説明原理、法則、理論といったものです。 「何かを主張すること」も研究の目的になり得ますが、主張しようとする「何か」に正当性がある ことは、やはり客観的な根拠にもとづき明らかにされなければなりません。 同時に、研究は学問的・社会的に意味のあるものでなければなりません。個人的な興味関心は、み なさん個人のモチベーションとしては重要ですが、研究として行う以上は学問的・社会的意味が問わ れます。このことはテーマ設定のところで具体的にふれます。 (2)みなさん個人にとっての「研究」の意味 研究者をめざすみなさんにとっては、こうした「研究」を行うこと自体が自分にとって重要である ことはいうまでもありません。しかし、それ以外の方にとっても単に勉強して知識を積み重ねるのと は異なる意味があります。学問的・社会的に意味があるテーマで、学術的な評価をうけることのでき る研究成果をまとめることを通じて、たとえば次のような人間的な能力を身につけることができます。 こうした能力は、今後の職業生活、社会生活で有用となります。逆に言えば、修士の学位はこうした 能力をもつという証明でもありますから、充実した研究によって修士の学位を取得することが、将来 の自分の社会的評価を高めることにもつながります。 ①問題発見能力 ②問題分析能力 ③調査能力 ④論理的思考力 ⑤説得力のある主張を行う力、などなど ２．研究の基本的な方法 おおざっぱにいって、次のような枠組みで研究の基本的な方法を整理することができます。当然中 間的なものや、いくつかの要素をあわせもった研究がありえますが、まずはこうした整理を念頭にお きながら自分が関心をもっている研究テーマや研究対象をとりあげることは、どのような枠組みが基 本になるかを考えておく必要があります。。 ①理論研究 おもに既存の理論的な研究を整理し、次のような点を明らかにしていくものです。 - 1 - ・新しい理論的課題 ・新しい概念規定、現在の概念規定への批判 ・新しい理論枠組み ・現在の理論的課題に対する回答 ・既存の理論に対する批判 ②実証研究 おもに実際に起きている現象や活動をとりあげ、それを検討することで次のような点を明らかにし ていくものです。現実をあつかうとはいえ、本質的には理論的な探究を行うことに違いはありません。 ケース・スタディもこのひとつといえるでしょう。 ・既存の理論の補強 ・既存の理論への批判 ・既存の理論に代わる新しい理論や法則の探求 ・新しい理論や法則の発見 ・現在の理論的課題への回答 ③応用研究 既存の理論や研究成果を、別な対象に応用し新たな知見を得ようとするものです。しかし、たとえ ばある経営理論を特定の企業に応用して新しい戦略を考えたとしても、それはその特定の企業にしか 意味がなく、「研究」とは言い難いものとなります。この場合でも非常に包括的かつ優れたビジネス プランとして結実したものであれば、課題研究論文として修士の学位に値