自然环境-高松.PDFVIP

第２章 自然環境 第2 章 自然環境 高松市は，平成17年度に塩江町，香川町，香南 の貴重なサンプルでもあるので，大切にしたいも 町，国分寺町，牟礼町，庵治町との合併により， のです。 面積が拡大し，それに伴い自然環境も多様になり 1950年代までの水田地帯のため池や用水路は， ました。特に，合併した６町には山地が多いため 水生昆虫，魚類，両生類，爬虫類など多様な水辺 に，それまでの高松市に比べ，新たに森林や河川 の動植物が多数生息していました。ため池ではヒ などの環境が増えました。なかでも讃岐山脈の大 キガエルの「おたまじゃくし」が群がり，水田で 滝山に自生するブナ林は，県内唯一の貴重な自然 はドジョウやメダカ，マルタニシなどが繁殖して ほ 環境でもあります。 いたほどです。それ以後，圃場の構造改善や農業 もともと高松市は，高松平野と点在する里山， 形態などの変化により，それらの生き物は激減し さらに穏やかな瀬戸内海に面しているために，長 ています。かつて平野部に無数にいたトノサマガ い歴史の中で早くから開発されて農業，漁業，塩 エルは，山間部の水田でなければ見ることができ 業，商業などの文化が開けました。特に第二次大 なくなっています。 戦後には構造的な高度経済成長期を迎えて以来， また，戦前まで用水路で無数に生息していたミ 里山の自然，河川やため池などの水辺環境，海岸 ズスマシ，ゲンゴロウ，タガメなどの水生昆虫も， 地形などに人手が加わり大きく変わりました。そ 姿を消してしまいました。 して，そこに生育・生息していた動植物は，大き 高松の海岸は，自然海岸が激減し，半人工海岸 な影響を受けてきました。 や人工海岸が多くなり，自然にできていた干潟や かつては，標高の高い讃岐山脈の上部は，ブナ， 磯などが数少なくなりました。特に，干潟は埋め ミズナラ，ケヤキなどの落葉広葉樹林で覆われて 立てにより少なくなりました。しかし，残された いましたが，その多くはスギ，ヒノキの植林に変 新川・春日川河口は，県内でも有数の干潟があり， わりました。しかし，そこには今も，低山や平地 ハクセンシオマネキやヤマトオサガニで代表さ で見られないような貴重な動植物が残されてい れるカニ類などの底生動物や魚類など生息し，多 ます。 数の鳥類が渡来する貴重な環境となっています。 また，低山帯や平地に点在する里山は，1970 島嶼部の海岸には貴重な海岸植物が生育して 年代より猛威をふるった松くい虫被害により，多 いました。しかし，近年になり海浜の環境が悪化 くのアカマツが枯死したものの全滅には至って し，海岸植物は減少し昔の面影はありません。そ いません。しかし，マツの減少により，それに依 のようななかで男木島のように，地元住民によっ 存して生存する動植物はピンチの状況になって て数少ないハマボウフウやハマゴウなどの海岸 います。一方，近年になり，マダケやモウソウチ