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文学史  [近代文学史の流れ] ―――戯作文学（江戸時代からの流れを受け継ぐ）――― 「水戸黄門」は、水戸黄門が悪代官相手に印籠を見せて一件落着する、代わり映えしない時代劇である。このいつもすることが決まっているワンパターンを「紋切り型」、善人が悪人を必ず懲らしめることを「勧善懲悪」という。 「水戸黄門」でわかるとおり、「紋切り型」で「勧善懲悪」の物語が江戸時代からの流行で、文明開化（人知が発達し、世の中が開けて生活が便利になること。特に、明治初年、日本が西洋文明を積極的に輸入し、急速に近代化?欧化した現象）した明治初期にも残っていた。これが「戯作文学」である。 しかし、この紋切り型はあまり現実味がないと考え、勧善懲悪に反発を覚える人々が現れた。「人間の現実、心理をありのままに写して描く」というものが「写実主義」で、このことが近代文学史の幕開けとなる。 仮名垣魯文 文明開化期の世相を風刺した滑稽本で有名。主な著書に「安愚楽鍋」「西洋道中膝栗毛」など。 ―――啓蒙思想と政治小説――― 啓蒙思想（理論） 江戸時代からの封建主義を批判し、西欧の思想を紹介した。 福沢諭吉 慶応義塾の創立者。長崎に留学、ついで大坂の緒方洪庵の適塾に学び、後に江戸に蘭学塾を開いて子弟を教授。この間、独力で英学を学ぶ。万延元年幕府遣米使節に随行して渡米。文久元年再び西欧諸国を視察する。慶応4年塾を慶応義塾と命名。維新後「明六雑誌」や「時事新報」を創刊、国民の啓蒙に尽力した。主著「学問のすゝめ」。 政治小説（実践） 自由民権運動を推進した。 ―――写実主義（江戸時代からの勧善懲悪を否定して、現実?心理をありのままに写す）――― 坪内逍遥と二葉亭四迷は、文明開化した日本に、人間心理をありのまま写していた西欧の外国文化を翻訳という形で紹介していただけに、戯作文学への反発は然るべきものだった。 「写実主義」は、それまでの日本文学にはなかった新しい風を吹き込んだ。しかしこの新しい試みは始まったばかりで、まだまだ未熟だった。「外国文学の紹介、模倣」や「言文一致体」（「……なり」という文語を「……だ」という、現在我々が使っている現代の口語に変える）など、表面的な新しさだけが目立っていた。次第に、内容の新しさまで充実する「自然主義」へと発展していく。 坪内逍遥 明治16年、東京大学卒業とともに早稲田大学の前身である東京専門学校の講師となる。同18年から19年「小説神髄」を発表。同24年には「早稲田文学」を創刊。森鴎外との間の没理想論争は有名。シェークスピアの研究にも力を尽くした。その業績を記念し演劇博物館が早稲田大学構内に建てられている。 二葉亭四迷 東京外国語学校露語学部中退。坪内逍遥を知り文学への志向を強め、明治20年、日本最初の言文一致体によるリアリズム小説「浮雲」を発表。また、ツルゲーネフの名訳を残した。その後東京外国語学校教授などを経て大阪朝日に入社。「其面影」などを発表。同42年ロシアからの帰国の途中ベンガル湾上に病死。  ―――擬古典主義（硯友社文学）――― 写実主義からの流れではあるが、写実を写生と取り違えたために成立した。井原西鶴の写生的文章の再発見をし、全面的な西欧化への反発が特徴である。 尾崎紅葉 自然主義以前の明治文壇の大家。硯友社をおこして「我楽多文庫」を創刊。泉鏡花、徳田秋声ら多くの門弟を出した。代表作「多情多恨」「金色夜叉」など。 「我楽多文庫」創刊「多情多恨」「金色夜叉」 言文一致体（である調） 幸田露伴 はじめ雅俗折衷体による男性的?理想主義的作風で、尾崎紅葉と並び称されたが、後に博学を駆使して史伝、考証、評釈に優れた仕事を残した。京都帝国大学講師。第一回文化勲章受章。小説「五重塔」、戯曲「名和長年」、その他「評釈芭蕉七部集」など。 「五重塔」男性的?理想主義的作風  ―――浪漫主義――― 自然主義と同じ部類ではあるが、自然主義とは異なり、単に趣向の違いから虚構を好んだために成立した。自己の心情、恋愛を確立。 北村透谷 島崎藤村らと「文学界」で活躍。近代浪漫主義運動の先駆者。自殺。 樋口一葉 15歳の時、中島歌子の歌塾に入門。18歳の時、父が死没し、生活のために筆をとる決心をして半井桃水に師事。明治29年「文芸倶楽部」に一括再発表された「たけくらべ」が好評を博し、その地位は不動のものとなった。他に「にごりえ」など。 泉鏡花 尾崎紅葉の門下。はじめ観念小説を発表、後に「高野聖」で作風を完成、神秘的、浪漫的世界を展開した。  ―――自然主義（西欧の科学主義を勘違いし、自己の現実?心理を暴露。フランスの自然主義作家ゾラの影響）――― 「自然主