河川生産力有効利用调査.PDF

河川生産力有効利用調査 北角 至・松岡 正義 谷本 尚則・萩平 將 目 的 当面の課題として,県栽培漁業センターでは県下の全放流種苗の 25％に当たるアユ種苗を生産し組 合・市町村等に配布,放流されているが,放流後の効果についてはほとんど知見がないのが実情であり, 種苗をより有効に活用するための放流方法について検討することを目的とした。吉野川を対象水域とし て,人工産アユ種苗の標識放流試験による移動分散や成長を中心に,水質環境や漁獲量及び漁場における 釣り人の動向調査のほか,遡上稚アユの体長測定・ふ化日の推定,鱗による個体識別等を行った。 Ⅰ 河川の概況と放流状況 1 河川の概況 試験河川は図 1に示したように県北部を東流し紀伊水道に注ぐ吉野川で,県内では最も大きい一級 河川である。水系の流域は四国 4県にまたがり,総流域面積は 3,653km,総流程 635.4km,幹川の流程 は192.8kmで,徳島県内では 108.2kmとなっている。試験区の対象域は図1に示した下流の第十堰か ら上流の池田ダムの区間（65.9km）の本流域として,上流,中流,下流の 3区に区分した。その概要を 表1に示した。 なお,下流区の第十堰（固定堰）は,河口より 14.5kmに位置し,その上流 1km（北岸側）には本流か ら分流する旧吉野川第十樋門（魚道施設あり）,さらに上流 7.5kmに柿原堰（固定堰）が存在する以 外,池田ダム（魚道施設あり）までは堰等はなく,また,標識放流地点（下流区,川島橋）より第十堰ま での距離は14.4km,池田ダムまでは51.5kmである。 －1－ 図1 吉野川水系及び放流試験区の略図 表1 試験区の概要 2 放流状況 試験区における組合の放流状況は表2に示したように,放流時期は4月を主に5月中旬で,放流量は 湖産が11.2㌧,人工産が1.9㌧,全体で約13.1㌧となっている。放流サイズは湖産では8,10g,人工産 で4gとして,放流尾数は湖産が 125万,人工産が46万尾,全体で 171万尾程度と推定される。なお, 天然稚アユの遡上は第十堰および分流する第十樋門で3月下旬から6月初め頃までみられ量的には多 い模様である。 表2 試験区における漁協による放流時期と放流量 －2－ Ⅱ 人工産アユ種苗の標識放流試験 人工産種苗の移動分散及び成長を把握するために行った。 方 法 1 試験放流種苗,標識および放流について 放流種苗は,県栽培漁業センターで生産されアユ養殖業者 （県南部）が飼育していた人工産種苗を用 いた（種苗生産の親魚は吉野川産の天然アユ（継代 2年魚）で,養殖業者の飼育水温は地下水が使用 され水温は15℃であった）。また,放流量,標識部位,大きさは表3に示した。標識作業は放流日の前日 に行い,放流は平成 3年 5月 18日に下流区のほぼ中間地点の川島橋潜水橋下に一括放流した。なお, 輸送時間は3時間で,放流時の河川水温は 17.5℃であった。 2 移動分散状況について 放流後の移動分散は,各区の組合の協力を得て漁獲日誌の記帳者や一般組合員の漁獲報告によった。 3 成長について 成長は漁獲報告のうち提供されたサンプルについて魚体測定した資料によった。 表3 放流種苗の放流量,標識部位,大きさ 結 果 1 移動分散状況 試験区における地先名と地先間の距離及び放流地点からの距離を図2（上図）に,地先別,時期別,再 捕報告尾数を図2（下図）に示した。 移動分散状況は,定点による定期的な再捕でないので,経日的な移動分散は明かでないが,放流地点 から時期別の再捕地先や再捕量の状況をみると,6月には上流区（⑳～ ）,中流区（⑮～⑱）で再捕 され,7月には再捕地先はほぼ同様であるが再捕量は多くなり,下流区でも再捕されるようになる。8 月には7月と同様に上,中,下流区で広く再捕され,中流区の下部（⑫～⑭）でもやや多くなるが,量的 には7月より少ない。9月には池田ダムの上流で 1尾再捕されたが上流区での再