ヒト手根の屈曲と伸展が前腕回内力に及ぼす.pdfVIP

2011 年 3 月　　　　　　　　　　　　手根屈筋が回内力に及ぼす効果　　　 　　　　　　　　　　　　　59 ＜原著論文＞ ヒト手根の屈曲と伸展が前腕回内力に及ぼす効果 1) 2) 3) ４), 7) 5) 6), 7) 佐藤孝史 、佐藤寿晃 、小西有美子 、 長沼誠 、鈴木克彦 、成田亜矢 、 2) ７) ７) 藤井浩美 、橋爪和足 、内藤　輝 1) 2) 3) 至誠堂総合病院　リハビリテーション科、 山形県立保健医療大学　保健医療学部　作業療法学科、 宮 古第一病院　リハビリテーション科、 ４)山形医療技術専門学校　理学療法学科、５)山形県立保健医療大 学　保健医療学部　理学療法学科、6) 山形大学医学部整形外科学講座、７)山形大学医学部解剖学第一講 座 （投稿：2010 年 7 月 5 日、採択：2010 年 11 月 4 日） 要　旨 　手根の屈曲と伸展が前腕の回内力に及ぼす効果について調べた。健常男性 8 名の右上肢を対象に、前腕回外 90°（回 外位）、60° （S60°）、30°（S30°）、0°位（中間位）で手根の力を抜いた状態（RP）、最大屈曲（FP）および最大伸展（EP） した状態で行った等尺性収縮による回内の最大力を計測した。RP、FP、EP における回内力は、回外位ではそれぞれ 8.3 ± 1.8（平均±標準偏差）、10.2 ± 2.2、5.7 ± 1.4 kg、S60°で 6.9 ± 1.8、8.0 ± 2.3、4.8 ± 1.4 kg、S30°で 5.1 ± 1.3、4.8 ± 1.3、3.3 ± 1.0 kg、中間位で 3.5 ± 0.8、3.0 ± 0.8、2.1 ± 0.6 kg となり、どの前腕肢位でも EP の回内力が小さかっ た。また、RP、FP、EP の回内力いずれも回内に伴い減少した。RP の回内力を 100％とすると、回外位、S60°、S30°、 中間位で、FP の回内力はそれぞれ 124 ± 7％、116 ± 8％、95 ± 23％、86 ± 12％、EP の回内力は 68 ± 10％、71 ± 17％、64 ± 14％、61 ± 20％となり、FP の回内力は回外位と S60°で大きく、EP の回内力はどの肢位でも小さくなっ た。回内力は手根の屈曲により増加、伸展により減少することが示された。 キーワード：ヒト、手根屈伸、前腕回内力、前腕肢位 序　文 いた状態、最大屈曲および最大伸展した状態で行った回 　前腕の回内や回外は、手を対象に向けるなど日常生活 外力を計測し、回外力が手根の伸展により増強し屈曲に で頻繁に用いられる運動である1~2)。この運動には、球関 より減弱することを示し報告してきた。しかし、未だ手 節に分類される腕橈関節、車軸関節に分類される上およ 根の屈曲および伸展が回内力に及ぼす効果について調べ び下橈尺関節の 3 つの関節が関与する。また、回内には た報告は見当たらない。そこで本研究では、同効果につ 方形回内筋、円回内筋、橈側手根屈筋、回外には回外筋、 いて調べた。 上腕二頭筋、長母指外転筋、長橈側手根伸筋、回外位お よび回内位から中間位に戻す回内・回外に腕橈骨筋が作 対　象　と　方　法 用する3~6)。このうち長橈側手根伸筋と橈側手根屈筋はそ 　対象は、上肢に既往疾患のない健常男性 8 名（20 － れぞれ手根の伸展と屈曲の主力筋であることから、回外 42 歳）の右上肢とした。被験者には、山形大学医学部 力は手根の伸展により増強し屈曲により減弱、逆に回内