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3.2 保有水平耐力 3.2.1 増分解析時の外力分布が保有水平耐力に及ぼす影響 【論点と背景】 増分解析で保有水平耐力 （以下 Qu と記す）を求める時の外力分布形に，Ai 分布を用いずに安易 に必要保有水平耐力 （以下Qun と記す）分布を用いるなど，意味が十分に理解されていないことが ある．ここでは，外力分布形によりQu の結果が異なることや，Qun 分布を用いる条件等を解説する． 【解説】 1．問題の要点 Qu 時の検討において，Qu がQun を上回ることの確認が必要である．Qu の算定には,増分解析法， 節点振分け法，仮想仕事法などがある． 増分解析法によって Q を求める場合，外力分布（高さ方向分布をいう）は，通常A 分布に従っ u i 1) て算定するが，それで得られる崩壊形には，2007 技術基準 に示された3 種類（全体崩壊形，部分 崩壊形，局部崩壊形）がある．そのうち，部分崩壊形と局部崩壊形では崩壊メカニズムがある層に 生じ，その他の層では崩壊に至っていない．一方Qun は，構造特性係数Ds と剛性率・偏心率Fes を A に乗じた，Q 分布となる．「崩壊層」においてA 分布による外力で Q /Q ≧1.0 を確認できた i un i u un としても，その他の「崩壊層以外の層」では，崩壊メカニズムが形成されていないため，Qu や Ds が決定できない場合がある．ここでは，外力分布形によって崩壊形や Qu が異なることと，Qu など 1) が決定できない場合の確認方法として，2007 技術基準 に示されたQun 分布について，その必要性 とそれを採用できる条件について説明する． 2. 外力分布によって崩壊形が異なることとQun 分布の必要性 2.1 崩壊形 1) 外力分布形によって耐力が異なることが，2007 技術基準 に片持梁の耐力を例にとって記されて いるが，ここでは2 層1 スパンの単純な架構について，塑性解析によるQu の算定法を説明する．（以 下，塑性理論については文献2）による） 架構モデルを図―1 に示す．各部材の塑性モーメントは Mo を基準とした係数で示し，階高は h とする．荷重は，各階床面に働く水平力のみ （以下，層せん断力として考慮する）とし，鉛直荷重 は考慮しない． 図―1 モデル架構図 本モデルで仮定される崩壊形は，１階または2 階の層崩壊と，2 階梁端降伏の全体崩壊である． 以下にそれぞれの仮定崩壊形に対応する層せん断力を求める． 図―2 では，1 階，2 階の各層が層崩壊すると仮定したメカニズムより，それぞれの各層せん断力 をM /h の関数として求めている． o 3.2.1－1 1 階崩壊仮定 2 階崩壊仮定 図―2 層崩壊メカニズム ：（）内は仮定崩壊層以外の静的許容条件 同様に，図―3 の全体崩壊形を仮定した時のメカニズム図についても求める． 図―3 全体崩壊メカニズム 以上の仮定崩壊形より得られた(1)～(3)式を図―4 に，横軸に 1 階の層せん断力Q1 を，縦軸に2 階 層せん断力Q を，それぞれにM /h で基準化して示す． 2 o 図―4 崩壊形と降伏曲面 (1)～(3)式で示される線上は架構の降伏曲面といい，この線上のすべての状態がメカニズム状態を 示