1．小動物の侵入を防止する富岡方式簡易電気柵.pdfVIP

群馬県野生動物調査・対策報告会（２００８年度） 2009.3.1 １．小動物の侵入を防止する富岡方式簡易電気柵 富岡地区農業指導センター 生産指導係 金嶋 由紀子 （発表者 ：農政部技術支援課 島方 淳一） 1.取り組みの背景及びねらい 甘楽富岡地区では平成 18 年夏頃から果実類への獣被害が急増し、９月に収穫を迎えたイチジク やブドウにおいて多数の食害が確認された。19 年春には収穫期を迎えたイチゴハウスのビニール が破られて、熟した果実の獣被害が急増した。被害園に設置した赤外線カメラによる加害獣の判別 の結果、タヌキのほか、ハクビシン ・アナグマ等の小動物であることがわかった。 小動物の場合、イノシシやシカ用の防護柵をそのまま転用しても、地面とのすき間やネットを上 って侵入するなどして防止できない。 そこでハクビシン等小動物の生態的特徴を考慮し、より容易で維持管理に手間がかからない実用 的な侵入防止柵の効果について、現地での実証に取り組んだ。 2.活動の内容 平成 18 年の被害発生から、獣種の特定、加害動物の生態把握に努め、さらに農地への侵入防止 柵や個体捕獲等へ具体的な対策を推し進めた。個体捕獲等については、市町村が積極的に取り組み、 指導センターでは農地への侵入防止方法について検証を重ねた。 (1)侵入防止柵の現地実証 ①ネッ ト柵と電牧線を併用した防止柵 （商品名：はくらく君） すでに実用化されている侵入防止柵である。地上を 1.2 ｍ付近までネットで囲み、その上 部に電牧線を1 本張るもので、ネットのすそを地中に埋め込むため、ネットを登ったり、潜 り込む小動物に対し効果が高い。電牧線の位置が高いため、草刈りのメンテナンスは必要 ないがハクビシン等がネットを食い破ったり、潜り込んで侵入を試みるのでネットのすそ をＬ字型にしっかりと埋め込むことが大切である。 設置場所 ：富岡市内 イチジク園 設置期間 ：平成 19 年８月～ 10 月 設置効果 設置前は、収穫が本格化する８月から被害が急増し、 平成 18 年は１ヶ月で平均 70 ～ 80 果の被害を受けた。翌 19 年も７月から同様の獣被害を受けていたが、８月 19 日 にネット柵と電牧線を併用した防止柵を設置した ところ、下表のとおり獣被害を完全に防止することができた。 被害果数 被害調査の時期 平成 18 年 296 果 ７月～ 10 月（４ヶ月） 19 年 防止柵設置前 88 果 ７月～８月 19 日（１ヶ月半） 〃 設置後 ０果 ８月19 日～10 月 ②低位２段ばり電牧線による防止柵 （富岡方式簡易電気柵） 富岡で考案されたイチゴハウスの侵入防止柵である。地際から潜り込んで侵入しようとす る小動物の特性を考慮し、ハウス周囲の低い位置 （地上８、18、28 ｃｍ）に２～３段電牧 線を張るだけの防止柵である。電牧線の設置位置が地表面から近いため、草等による漏電に 注意しなければならないが、イチゴでの獣被害は換気を開始する２月からのため、比較的雑 10 群馬県野生動物調査・対策報告会（２００８年度） 200