損傷を受けた木造住宅の余震による倒壊危険性に関する研究.pdfVIP

損傷を受けた木造住宅の余震による倒壊危険性に関する研究† *1 *1 *1 高 梨 成 次 大 幢 勝 利 高 橋 弘 樹 我が国は，世界有数の地震多発国であり，過去には幾度も巨大地震によって建築物が倒壊するなどの甚大な被 害を受けてきた．現在も東海，東南海地震および関東地方を中心とした首都圏直下型地震の発生が危惧されてい る．このような自然災害に対して，建築物の被害を完全に回避することは，経済性や機能性確保のため困難であ る．そのため災害が発生した後には，建築物の解体・撤去工事や補修工事が必要になる．復旧工事を行うに当た り，被害を受け不安定になった建築物が，余震を受けた際の倒壊危険性に関する検討は，これまで殆ど行われて きていない．本研究では，既に損傷を受けた建築物が，余震を受けた際の倒壊危険性について，新耐震設計法以 前に設計された標準的な木造住宅をモデル化し，本震による損傷度合いと本震に対する余震の大きさの比率をパ ラメータとした地震応答解析によって検討を行った．その結果，本震によって，ある一定以上の損傷を受けた木 造建築物は，余震によって損傷が進行し，倒壊する危険性が高くなることが分かった． キーワード: 木造住宅，地震応答解析，塑性率，損傷状況，倒壊危険性，危険度判定 1 はじめに ×105mm，梁および土台の寸法は 105mm ×240mm と 我が国は，世界有数の地震多発国であり，過去には幾 した．間柱および筋かいの材料はスギとし，間柱の寸法 度も巨大地震によって建築物等が倒壊するなどの甚大な は 27mm ×105mm，筋かいの寸法は 30mm ×90mm と 被害を受けてきた，現在も東海，東南海地震および関東 した．試験体は図 1 中のA 点で反力床に固定された鉄骨 地方を中心とした首都圏直下型地震の発生が危惧されて 架台に緊結された 2) ．外壁は，木ずりにメタルラスを貼 いる．このような大地震に対して建築物の被害を完全に 付けた上に，厚さ 20mm のモルタル仕上げとした．内壁 回避することは，経済的理由や建築物の機能性の問題に は厚さ 9.5mm の石膏ラスボード下地に厚さ 8mm の漆 より困難である．そのため，それらの災害が発生した後 喰仕上げとした． には，建築物の解体・撤去工事や補修工事等が必要にな 想定建築物の重量は品確法性能表示が想定する荷重に る．さらに，2011 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平 従い，重い屋根 1274N/㎡，壁 735N/㎡，床 588N/㎡， 洋沖地震では，強震とされる震度階 5 を超える大きさの 積載 598N/㎡と仮定したため，質量約 4.3t の錘を試験体 余震が何度となく観測されている．このような状況下に の上部に設置した． おいては，本震によって被害を受けた建築物が，余震に よって倒壊する危険性が高くなると考えられる．そこで， 2) 復元力特性モデル 本研究では，損傷を受けた木造建築物の余震による倒壊 図 1 に示した試験体を用いた加力実験で得られた復元 危険性について地震応答解析によって検討し，作業員が 力特性をモデル化する．復元力モデルは，バイリニアモ 復旧作業中に二次災害に巻き込まれる恐れを回避させる デルとスリップモデルを並列結合したモデルを用いるこ ための安全情報を提供することを目的とした． とにした．バイリニアモデルとスリップモデルを図2 に 示す．同図中には，各状態の整理番号を