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土木学会論文集Ｂ Vol.66 No.2,104-118,2010.4 実河川洪水流における浮子の更正係数 1 2 二瓶泰雄 ・酒井雄弘 1 正会員 東京理科大学准教授 理工学部土木工学科（〒278-8510 千葉県野田市山崎2641） E-mail:nihei@rs.noda.tus.ac.jp 2 正会員 （株）建設技術研究所（〒980-0014 宮城県仙台市青葉区本町 2-15-1） 一般的な洪水流量観測法である浮子観測に必要な更正係数（=水深平均流速／表層流速）の実態を把握す るために，超音波ドップラー流速分布計を用いて 5 つの大河川の洪水流における流速鉛直分布データを数 多く収集し，更正係数に関する現行の標準値や既存の理論式，実験式の適用性を調べた．流速鉛直分布や 更正係数の観測値は，安芸式よりも対数分布則とより一致することが定量的に示された．我が国の更正係 数の標準値は安芸式に基づいて算定されているため，観測値と標準値の整合性は低く，喫水 4m の浮子に 関する観測データの平均値は標準値を 0.04～0.10 も下回る．これには，安芸式中の流速ピークの相対水深 a の設定に問題があることが示された．以上の結果に基づいて，更正係数の評価法を整理した． Key Words :float, discharge measurement, vertical velocity profile, ADCP, logarithmic profile 1．はじめに また，これらの結果の一部を反映して，建設省（現国土 交通省）は，一般に使いやすい標準的な更正係数を与え 5） 流量観測は，河川管理における基礎をなすものであり， ている ．世界気象機関 WMO （World Meteorological 11 Organization）も更正係数の標準値を示している ） 古くより継続的に行われている．特に，大規模洪水におけ ． る流量観測は治水対策上極めて重要であるが，低水観測と このように既存の研究は多いものの，実河川の洪水流 比べて観測頻度が少なく，安全・確実・高精度に観測を行 データを用いた更正係数の検討は非常に少ない．また うことが強く望まれる．我が国の河川のように，出水時に ISO 規格では，浮子観測の更正係数について言及されて 12 いない ） 大量のゴミや浮