【精品】西夏语通韵字典1.pdf

Title西夏語通韻字典 Author(s)荒川, 慎太郎 Citation言語学研究 (1997), 16: 1-151 Issue Date1997-12-24 URL /2433/88006 Right Type Departmental Bulletin Paper Textversionpublisher Kyoto University 西夏語通韻字典 荒川慎太郎 0.本 字典の目的 西夏国では、漢語音韻学に倣った西夏語音韻学とでも言うべきものが発展し、各種 の韻書が編纂された。完全な形で残らない各韻書の欠損部を復元し、韻書の構成法を 明らかにすることは、西夏語音韻論の研究に取り組むものにとって、重要な課題の一 つである。筆者はこの目的のために、諸韻書から各西夏文字の反切上下字を抽出し、 また、同一音節の文字、異声調であり同一音節の文字を整理し、推定音を付した発音 字典を作成した。 韻書によれば、西夏語は二声調を基本に持つ言語である。これによって韻母を分類 すると、平声97韻 ・上声86韻 にまとめられる。声調による対立を除いた同一音節に は、平声の声調のみ持つもの、上声の声調のみ持つもの、両声調を持つもの、が存在 する。声調の対立を除いて韻母の種類を分類(通 韻)す ると、西夏語韻母は105韻 類に 分類されることが判明している。 西夏語通韻字典は、 『文海』 ・『同音』などの西夏語の韻書をもとに、西夏人音韻 学者の分類する105韻 の韻母順に、通韻、つまり平声 ・上声が共通する音節を整理 した ものである。各音節に属する文字は、平声 ・上声音節字を簡便に比較できる形で並記 した。 また、通韻字典付録として西夏語音とサンスクリット音との関係を示した各種資 料、西夏語の音節表(声 母と韻母の結合表)を 加えた。 以下、簡単に字典の構成と表記上の注意を述べる。 1.韻 母 ・声母推定音対応表 本文に入る前に 「西夏語105韻 ・韻母推定音対応表」と 「西夏語声母推定音対応表」 を挙げた。 「西夏語105韻 ・韻母推定音対応表」では、西夏人音韻学者が分類した西夏語の各韻 母、平声韻と上声韻の対応を示すとともに、これまで各研究者が推定した再構音を示 した。 声母については、九種類の声母系列注2以外に、西夏人音韻学者が示した客観的な分 類は存在しないが、反切上字の系聯関係から導き出された分類と、各研究者の推定音 を、 「西夏語声母推定音対応表」の形でまとめた。 注1この字典は 、荒川(1997) 「韻書の構成法からみた西夏語音の研究一等韻の構造に関する一考察」 (京都大学大学院修士論文)の 参考資料 「西夏語通韻字典」を一部修正、増補したものである。 注2重唇音類 、軽唇音類…等の西夏語の呼称を持つ、主に調音点による声母の大まかな分類を指す。 一1一 2.通 韻字典本文 編)」 、 「通韻字典(『 文海雑類』上声韻類編)」 からなる。 語音節を整理 したものである。西夏語韻書 『文海』から、各音節を代表する西夏文 字、それに付された反切上下字、同一音節の文字、を抽出した。そして、反切上字、 乃ち声母順注3にこれを配した。一部 『同音』で補足した文字は()に 入れて表記し てある。各音節には西田の分類による 『同音』の小類グループ番号、および西田の推 定する西夏語音を付 した。 韻書 『文海雑類』収録の音節については、別に 「通韻字典(『 文海雑類』平声韻類 編)」 、 「通韻字典(『 文海雑類』上声韻類編)」 をもうけた。 『文海雑類』では、 r文海』と異なり、各音節が105韻 順に配列されていない。そこで原典どおり、平声、 上声の声調で分け、次に重唇音類、軽唇音類、…という声母系列ごとに現れる順に、 各音節をまとめた。 『文海雑類』は欠損部も多 く、 r雑類』で補った箇所は少なくな い。しかし 『雑類亅原典には反切上字、反切下字が記されていないため、本字典でも これらは記載していない。 3.通 韻字典付録 3.1サ ンスクリット対音