ⅰ調査課題名造成藻場のイセエビ保育機能の解明 施機関及び.pdfVIP

Ⅰ 調査課題名 造成藻場のイセエビ保育機能の解明 Ⅱ 実施機関及び担当者名 西海区水産研究所 資源生産部 吉村 拓・八谷光介・清本節夫 Ⅲ 調査概要 核藻場礁を用いた野外実験に基づいて、造成された藻場がイセエビの維持・回復に果たす役 割を評価する。 Ⅳ 調査方法 稚イセエビの隠れ場を備えた核藻場礁を用いて、長崎市三重町地先ではノコギリモク区（四季 藻場）、キレバモク区（春藻場）、無海藻区（磯焼け）を各 2 基、野母町地先ではノコギリモク区（四 季藻場）、アントクメ区（春藻場）、無海藻区（磯焼け）各 2 基を実験区として設定し、各区のイセエビ 加入状況と海藻の生育状況調査を 6～11 月の期間中に月 1～2 回実施した。 Ⅵ 調査結果 両地先ともに四季藻場形成種であるノコギリモク区での着底数が最も多く、1 回の観察当たりの 平均尾数は両水域ともに 1.3尾/ ㎡であった。加入期間も長く、野母町では6～10 月に加入が継続 した。春藻場形成種であるアントクメとキレバモクの実験区では、ノコギリモクに比較すると着底数は 少なく、1 回の観察当たりの平均観察尾数はそれぞれ 0.3 と 0.6 尾/ ㎡、加入期間は不連続あるい は短期であった。野母町地先の無海藻区では 10 月に 1 個体の着底が確認されたのみで、三重町 地先の同区ではイセエビは全く観察されなかった（図 1）。藻場を構成する海藻種が異なると、イセ エビポストラーバの着底数も有意に異なることが示された（図 2）。 Ⅶ 考察 過去 5 年間でイセエビポストラーバの加入レベルが最低の年であったため、実験礁への着底数 も少なかったが、面積が 2.5 ㎡のごく小規模な藻場でも、最大で 4.4 尾/ ㎡のイセエビポストラーバ の加入を起こさせ、隠れ場である孔のサイズが限定されている環境ではあるが、甲長 20 mm 以下 の稚エビを最大 2.0 尾/ ㎡の密度で棲息させるなど、保育場としての一定の機能を持つことが実証 された。また、海藻のない実験礁や直立部がなくなる夏以降の春藻場にはポストラーバの加入がほ とんど生じなかったことから、イセエビ資源の維持や回復策を考える場合、藻場の造成や再生が不 可欠であると指摘できる。ただし、藻場形成期間の短い春藻場は四季藻場に比較してイセエビ保 育機能がやや劣る可能性が示唆された点には注意を要するだろう。 Ⅷ 今後の課題 過去 2 年間は、ポストラーバの着底に焦点を当てて藻場の機能評価を行った。イセエビは、着底 後のおよそ 1 年間を藻場で棲息することが知られていることから、より長期的視点に立って造成藻 場のイセエビ保育場機能を評価するために、より大きなサイズの稚エビも対象に加えた野外実験 -100- や調査を計画する必要がある。 写真１. 左：核藻場礁 k-hatリーフをベースに利用した実験礁 中：ネット内の海藻ユニット壁面に穿った稚エビ用の孔 右：調査対象である底生生活初期の稚エビ 6 6 台 ノコギリモク区 台 ノコギリモク区 / / 数 4 数 4 底 底 着 2 着 2 均 均 平 平 0 0 6 7