第1章数学的基礎のまとめ.docVIP

数学的基礎のまとめ 『化学などの自然科学の拠り所は、種々の量の間の関係を理解することにある。すなわち、温度を上げると水に対する食塩の溶解度はどうなるか、圧力を下げるとアルコールの沸点はどうなるか、溶液に酸を加えると電場中のイオン移動度はどうなるかなど、種々の変数の間の関係式を理解することにその学問的な基礎がおかれる。 このような関係式は、たいてい実数の変数を含む代数式で与えられ、多くの場合、anxn という形の項の和で表される。この形の式を多項式(polynomial)という。多項式に含まれる独立な変数の数は2つ以上になることもある。多項式 f(x, y,…) の各変数を定数倍した変数で置き換えて得られる式が、もとの多項式にその定数のn乗倍を掛けたものに等しくなるとき、 (1.1) その式をn次斉次式(homogeneous polynomial of degree n)という。たとえば、ax2y+bxy2+cxyzは3次斉次式であるが、dx2y+exyは斉次式ではない。ここで、x、y、zは変数、a、b、c、d、eは定数とする。 　化学で扱う基本的な量の多くは斉次式で表される。このことは、重要な関係式を導く際に役立ち、とくに熱力学の分野において威力を発揮する。たとえば、示強性の量と示量性の量を区別するのに役立つ。示強性の量は、その物質の性質を規定する“内在的な”量であり、物質の量(たとえば、分子の数)には依存しない。温度や密度は、示強性の量の例である。一方、示量性の量は物質の量そのものに依存する。したがって、系全体の示量性の量は、各部分の量の総和として求められる。内部エネルギー、エンタルピー、熱容量などは示量性の量である。物質量の単位にモルを用いてこれらの量の数学的性質を分類すると、示強性の量はモル数について0次斉次式であり、示量性の量はモル数について1次斉次式である。』[1] 特別な関数 [1], [2] 三角関数、対数関数、指数関数などのように、多項式で表せない関数を超越関数(transcendental function)という。超越関数は一般に無限級数で表される。したがって、超越関数の値をある精度で求めたいときは、級数に含まれる多数の項の和を計算することになる。実際に電卓やコンピュータで超越関数の値を求めるときには、無限級数の和を途中で打ち切る必要がある。関数を級数で表す一般的な方法はテイラー級数展開(Taylor series expansion)である。 指数関数 実数の性質 【定義】 nが正の整数のとき (1.2) 【定義】 のとき　 (1.3) でkが正の整数のとき (1.4) 〔指数法則〕 　　　、でm、nが整数のとき (1.5) (1.6) (1.7) (1.8) (1.9) 【定義】 (1) でnが正の整数のとき は 　 (1.10) となるcを表す。 (2) aが実数でnが正整数のとき は 　 (1.11) となるcを表す。 【定義】 nが正の整数のとき、n乗してa となる数をaのn乗根という。 特にn = 2のときを平方根といい、 n = 3のときを立方根という。 〔平方根〕 のとき (1.12) (1.13) (2) (1.14) 　(3) 、のとき (1.15) (1.16) (4) 、のとき (1.17) (5) 、のとき (1.18) (6) のとき (1.19) 【定義】 m、nが正の整数のとき (1.20) ただしmが偶数のときは 　　　注 正の実数a、bに対して指数 法則が成立する。 指数法則は、指数が整数もしくは分数、すなわち有理数(rational number)であるならば常に成り立つ。指数がπとかのような無理数のときにも、その無理数に近い有理数を用いて近似値を見積もることができ、その精度は近似の度合でいくらでも高められる。 指数関数 【定義】 のとき任意の実数αに対し てを次のように定義する。 a=1のとき 　　　(1.21) のとき (1.22) (supは数列の上限を表す) のとき (1.23) (infは数列の下限を表す) 〔定理〕 α、βが実数でαβならば のときは のときは 〔定理〕 のとき任意の実数α、βに 対して (1.24) 【定義】 関数をaを底 とする指数関数という。 〔定理〕 のグラフは のとき単調増加。 のとき単調減少。 常に(0, 1)を通る。 x軸の上側にあってx軸(y=0)を漸近線にもつ。 対数関数 【定義】 において、ど んな正の数yに対しても となる実数xが一つだけ