デザイン思考に基づく授業づくりに関する考察.PDFVIP

デザイン思考に基づく授業づくりに関する考察 （ミュージアム）徳田明仁 A Research of Developing New Style Class Bassed on Design Thinking Akihito TOKUDA （平成２６年６月１６日受理） １．研究の目的と背景 とする「デザインによるイノベーション」という理念が ３） 近年、「デザイン思考」なる考えが、デザインを生業 提唱され（Gaynor,2002) 、社会的に認識されるように とする分野にとどまらず、これまで関心を抱かなかった なった。 業界にも広がりはじめている。この背景には、２０世紀 それでは「デザイン思考」とは、一体なにを意味する の終わりより多くの日本企業が直面した自前技術による のか。「デザイン思考」とは、米国の代表的デザイン 垂直統合型ビジネスが行き詰まり、いわゆる伝統的技術 ファーム・IDEO が開発しDeep Dive と名付けた手法 ４） 経営の限界が明らかになってきた事と関連している。 に代表されるイノベーションプロセスのことである。 「技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか」という CEO であるティム・ブラウン（Tim Brown）は、“技 １） 問題意識が提示されている（妹尾,2009）。この問いに 術的に実現可能で、実行可能なビジネス戦略によって顧 応えるべく、新たなイノベーションプロセスとビジネス 客価値と市場機会に転換され得るものと、人びとのニー モデルの模索という問題に対するひとつの解が「デザイ ズとを一致させるよう、デザイナーの感性と手法を用い ５）６） ン思考（Design Thinking）」であり、新たなイノベー る領域”であると述べている（Brown,2008)。言い換 ション手法として期待されはじめているのである。 えるならば、“デザイナーの感性と手法を用いて人びと デザインとイノベーションとの関係については、デザ のニーズと技術の力を取り持つこと。”である。 インを定義づける要素が、イノベーションを定義づける 本稿では、「デザイン思考」の考え方に基づき、その ２） 要素と密接に関係があることが示されている（表１）。 思考プロセスに着目し、要素を分析することにより、経 済理論としてのイノベーションプロセスを教育的視点に おける創造プロセス、創造の仕組みと捉え直し、教育の 場に取り入れることで、受講生に「ひらめきを計画的に 生み出すための発想法」を身につけさせることを目指す 教授法の開発を企図している。もとより、この大きな目