クロマデプス3d制作技法 - texnai.co.jp.pdfVIP

３Ｄ クロマデプス３Ｄ制作技法 深沢武雄/株式会社テクネ １．クロマデプス３Ｄとその特徴 一般に知られている立体視技術は左眼用と右眼用の互いに視差を有する２つの画像 （ステレオペア）を必 要とし、それらを立体視画像として統合 （エンコード）したり、左右の絵に分離 （デコード）したりする方 法によってそれぞれ偏光式、シャッター式、カラーフィルター式 （アナグリフ）などに分類される。 これに対してクロマデプス３Ｄは、専用のクロマデプスメガネを通して見ることにより、文字通り対象の 「色相 （クロマ）の違い」によって 「奥行き （デプス）の違い」が感知される技術である。 [長所] 従って偏光式やアナグリフの場合、立体視画像はメガネなしではステレオペアが互いに重なって 二重に見えてしまい、時には非常に見苦しい映像や印刷物になってしまう恐れがある。これに対してクロマ デプスの場合は、もともとステレオペアは使っていないためにメガネなしでも鮮明な画像として見ることが できるのが最大の特徴であり、利点でもある。 [短所] しかしながらクロマデプスの場合は、色相だけで奥行きが決まるためにリアルな3D映像の制作は 基本的に不可能になる。つまり、実際は黒バックの場合と白バックの場合では奥行きの関係が逆転するので あるが、例えば赤いリンゴを奥に見せるためにはリンゴの色を青系に変換する必要がでてくるからである。 そして、立体物をパースペクテイブに表現したい場合などには、常に赤系から青系、または青系から赤系へ のグラデーションに頼らざるを得なくなる。つまり、偏光式やシャッターメガネ式で可能なリアルな３Ｄ映 像は、クロマデプスではとうてい不可能ということになる。ただし、リアリズムを捨てさえすればポップで グラフィックなおもしろさを生かしたユニークな作品作りは可能ということになる。 ２．クロマデプス３Ｄの原理 [図１]US特許明細書にみる原理図 1 クロマデプス３Ｄを実現させるためには専用のクロマデプスメガネの着用が必要であるが、そのクロマデ プスメガネの特許が 1991年に米国で取得されている。上図はその特許明細書に記載された原理図であるが、 これを見るとクロマデプスメガネは一種のマイクロプリズムから構成されるものであり、光の波長つまり色 によって屈折に強弱が生じ、そのために結像 （この場合は虚像）する位置が異なってくるというのである。 それをもっとわかりやすく説明しているのが下図である。 [図２]クロマデプスメガネの原理図 第 1図と第2図の違いは、同じプリズムを使った説明にもかかわらず赤青の結像する位置が逆であること である。そこで更に特許明細を調べてみるとクロマデプスレンズは単純なものではなく、下図のように複雑 な構造をもっているようである。 [図３] US特許明細書にみる原理図２ 2 [図４]強弱2種類の分光プリズムを使ったクロマデプスレンズの構造 クロマデプスレンズが単純なマイクロプリズムでないことは、対象物の奥行きがその色だけで絶対的に決定 されるのではなく、背景との関係など相対的に決まることでもわかる。筆者もクロマデプスレンズにグリー ンのレーザーポインターを照射したところ、その先のスクリーンに回折像のような点の繰り返しパターンが 投影されるのを見ることができた。これは明らかにクロマデプスレンズが単純なマイクロプリズムでないこ とを示すものであり、謎が深まってくるばかりである。ちなみにクロマデプスレンズの発明者は現在90歳近 くで病弱であるため、技術的な問い合わせが困難な状況であることを付記しておく。 3 ２．クロマデプス３Ｄ制作の実際 （１）基本 原理はわからなくても経験的にクロマデプス3Ｄ画像を効果的に制作することは可能であり、以下の 2点が 基本である。 1.黒バックの場合は、青系が最も奥に沈み、赤系が手前に浮かんでくる。 2.白バックの場合は、赤系が最も