ダム操作よもやま話 その1 - www5b.biglobe.ne.jp.pdfVIP

ダム操作よもやま話 その １ ～流入量把握をめぐる話題～ まえがき 私は、ダム操作について、現地における課題を分析 しながら、その解決の方向を追求し てきました。その結果、洪水時操作のそれぞれの段階において、洪水前操作、ただし書き 操作への対応を考慮 しながらの洪水調節操作、必要に応 じてのただし書き操作、洪水終了 後の水位の低下など、洪水の始まりから終わりまでの、それぞれに 目的の異なる一連のし かも同じ重みを持つ操作行動の連携 としてとらえる必要があるとの結論を得ました。 しかるに、ある操作から次の操作への移行を、どの様な情報に基づいてどの段階で実行 するか、と言った考え方に基づいて組み立てることにより、ダムの操作をよりシステマテ ックに考察することが可能となることも判 りました。 このようなことから、それぞれの段階の操作 と操作相互間の移行の判断方法を可能な限 り定式化して考察することとした次第です。 これらの取 り組みを通 して、考察の結果を 「ダム操作の理論 と実際」として、とりまと め印刷を行 うとともに、ＨＰとしてもリリースしています。 様々な角度からの意見も賜 り、さらなる考察を積み重ねながらシステムの改善を図って 参 りました。 これらの過程で明らかになったことは、「これまで操作規則の中で要求されている様々な 操作条件については、実行不可能な部分があるのではないか」、また、「仮に操作規則に定 められた条件さえクリヤーすれば、それは合理的なダム操作 となるのであるかどうか」、と 言った領域の議論を展開するに至 りました。 本稿では洪水のそれぞれの段階における操作を可能な限り定式化して、これを分析する 過程で明らかになった課題や、その対策の方法等について、「ダム操作の理論 と実際」にお いて十分に言及することの出来なかった部分についても、よもやま話的に記述 して行きた いと考えています。 流入量把握に関する課題 と対応策、洪水前操作の課題 と対応策、定水位操作、洪水調節 ダムの操作のあり方、利水ダムの操作のありかた等々についていくつかのシリーズに分け て記述 して参 りたいと思います。 今回はその第一段 として、ダム操作において最も基本的な情報の一つである流入量をめ ぐる諸課題について記述 してみました。 なお、本稿における諸計算はすべて自前のパソコンのＥｘｅｌによって実施 しています。 ということは、ダム操作の主要な部分は自前のパソコンによって実行可能であるというこ とにほかなりません。 ダムコンとパソコンの併用により、ダムコンに トラブルが生 じた場合のバックアップや ダムコンの計算結果の確認など、さらに安全確実な操作に向けてのアプローチを目指すも のです。このような視点から本稿をお読みいただければ幸いに思います。 1 １．流入量把握精度を支配する要素 ダムへの流入量の測定は、「〇〇地点の流量をもとに算定するものとするが、水位の上昇 及び低下の時間的な割合から算定 した数値によって流入量を修正することが出来るものと する。」 とされています。 ここで、「〇〇地点の流量」は〇〇地点のＨ―Ｑカーブの誤差が大きい場合が多く、この ようにして算定 した流入量 と放流量の履歴から求めた貯水量 と実測の貯水位の変化から求 めた貯水量が一致 しない場合があります。 この矛盾 を回避するため、実態は後段の 「水位の上昇及び低下の時間的な割合から算定 した数値」を採用する場合が殆 どです。 このような背景を念頭に置きながら現場において主に採用 されている流入量の計算方法 について考えてみたいと思います。 具体的には、ダム操作細則への記載例 として次のようなかたちで記述されています。 （流入量） 第 ２条 規則第〇条に規定する流入量は、規則第〇〇条に規定する水位の上昇又は低下の 時間的割合から次式により算出するものとする。」 Ｑ＝（Ｖ+ｑ）／ ｔ……………… （1） ｔ：計算単位時間 （単位 ：sec） ３ Ｖ：計算単位時間に増減 した貯留量 （単位 ：ｍ ） ３ ｑ：計算単位時間内の積算全放