国立天文台定例天体観望会.doc

国立天文台定例天体観望会 2001/03/09 本日の観望天体 シリウスの謎を追え ～シリウス(αCMa)～ ○はじめに 　本日は国立天文台定例観望会にようこそお越し下さいました。 ごゆっくりとお楽しみ下さい。 ○本日の流れ ?受付 ?解説 ?観望　50cmカセグレン望遠鏡?双眼鏡(晴天時のみ) ?自由解散 アンケートにご協力下さい お手元の資料は、観望の前にお聞きいただく解説の資料です 今回は、シリウスの紹介に始まり、白色矮星というちょっと変わった天体の 発見について、天文学的な興味をご紹介します。 ○おおいぬ座を見つけよう 　3月上旬の20時頃、南の空を見上げると明るい1等星が3つ、逆三角形に並んで輝きを競っています。「冬の大三角形」です。右上の赤い星がオリオン座のベテルギウス。左上がこいぬ座のプロキオン。そして、ひときわ輝きの明るい星が、おおいぬ座のシリウスです。 　おおいぬ座は、シリウスを鼻先として、前足を持ち上げて後ろ足で立っている犬の姿を夜空に描き出しています。全天一の明るさを誇る星を含む星座ですから、場所はすぐに見つかりますね。シリウスを真ん中に、三つの星が描く少し細長い二等辺三角形がおおいぬの顔を、そして鼓型の胴体から4本の足としっぽが伸びて、全体を形作っています。なかなかうまく犬の姿を現していますよね。 Canis Major ○神話 　おおいぬ座に描かれている犬は、狩人オリオンがつれていた猟犬であるとも、女神アルテミスの裸身を見てしまい鹿に変えられた狩人アクタイオンを主人とも知らず引き裂いた猟犬であるとも言われます。きょうは、おおいぬ座にまつわるそんないくつかの神話の一つを紹介しましょう。 　テーベの国は、家畜を悪い狐に荒らされて困っていました。その狐は神に遣わされ、逃げ足がものすごく速く何者にも追いつかれないため、どのような方法を持ってしても決して捕まえることができません。 　「何かキツネ退治の名案はないものか」 　困り果てたテーベの人々は、狩人ケファロスの持つ俊足の犬「レラプス」の力を借りることにしました。女神アルテミスより贈られたレラプスは、狙った獲物を必ず捕らえることができます。何者にも追いつかれない狐と何者をも逃がさない猟犬レラプス。神に愛でられた二頭の獣の競争は、一向に勝負がつきません。 　それを見た大神ゼウスは、どちらもその運命を全うできるように両者の姿を石に変え、勝負を預かったと言います。風のように走り抜けた狐と猟犬は、今でも夏の空のこぎつね座と冬の空のおおいぬ座として、終わることのない競争を続けていると言うことです。 ○シリウスの言い伝え 　シリウスの語源は、「焼き焦がす者」という意味のギリシア語です。シリウスが日の出直前の東の空に現れ、太陽と共に昇ってくるのが真夏であったためといわれます。望遠鏡を通してみたまばゆい輝きは、まさにその名にふさわしい姿と言えるでしょう。 　古代エジプトでは、その頃にナイル川が増水し氾濫することを知り、一年の初めとしました。洪水によりもたらされる上流の肥沃な土壌は、ナイル川流域に豊かな恵みをもたらすため、その時期を教えるシリウスを「ソティス(水の上の星)」と呼び崇拝していました。 　中国では、シリウスを「天狼星」と呼んでいました。冬の寒空に孝行とかが約シリウスを、獲物を狙うオオカミの冷たい目の光りにたとえたのでしょうか。 　日本では、「あおぼし」「おおぼし」と呼び親しんできました。シリウスは青白い星で、他を圧する輝きを放っていますから、もっともな名前かも知れませんね。 ○シリウスはどんな星？ 　シリウスとは、どのような星なのでしょうか。太陽以外の全天の恒星の中では最も明るい-1.5等星、普通の1等星の10倍近いという輝きを誇っているのだから、さぞかし大きな星なのでしょうか。実は、シリウスの直径は太陽の1.8倍しかありません。表面温度も1万度程度と、宇宙ではいたって標準的な恒星です。この星が地球から見ると大変明るく見えるのは、地球からの距離が約8.7光年と、太陽から7番目の近さにあるためです。同じ1等星でも、例えばベテルギウスは太陽の300倍もの直径を持っています。それなのに、シリウスより暗いのは、地球からの距離が500光年もあるからです。 星名/固有名 おおいぬ座α星 (αCMa) / Sirius カタログ番号 Bright Star No. 2491, HD No. 48915 赤道座標(2000年分点) R.A.=06h45.1m; Decl.= -16°43′ 距離 8.7光年 実視等級 -1.46等 絶対等級 1.42等 スペ