J-PARCと加速器科学（性能限界に挑む戦略）.pdfVIP

J-PARC と加速器科学（性能限界に挑む戦略） 吉岡正和 （高エネルギー加速器研究機構） KEK Mechanical Engineering Workshop Masakazu YOSHIOKA (KEK, High Energy Accelerator Research Organization) J-PARC is a large-scale project aiming to achieve MW-class proton beam power, which is a big jump from our experiences on KEK 12 GeV PS. Critical issues to realize the goal of the project are to understand the space charge effect, to develop reliable beam injection and extraction systems with extremely high efficiency and to develop radiation maintenance technologies. This paper describes characteristics of J-PARC accelerator and the methodology to carry out the large-scale accelerator facility construction. Key Words : accelerator science, methodology, critical issues, J-PARC 1. はじめに ため、困難を極めた。図１には英国RAL の核破砕中性 子施設ISIS の高放射化場における保守作業の様子を参 J-PARC の最近の状況について池上雅紀氏が高エネ 考のために示す。 ルギーニュースに良くまとまった、かつ臨場感溢れる 記事を掲載された1) 。本稿は読者がその記事を読まれて いることを前提に（是非とも一読されることを勧めま す）、前置き等も全てこの池上論文をはじめとする他の 1 5) 文献 ～ に譲り、重複を避けて書くことにする。 2. J-PARC 加速器建設の進め方 J-PARC は昨年3 月に役割を終えてシャットダウンし たKEK12 GeV 陽子シンクロトロン（PS）の後継機と 言える。全体の構成や多目的施設という点がPS の経験 をベースとしているからである。ところで余談ではあ 図1: 英国RAL のISIS における保守作業の様子（P. Gear るが、一年前にコミッショニングを開始した米国の核 氏より）。高放射化場における保守作業の鉄則は機器と 破砕中性子施設である SNS は単一目的の施設ながら、 の距離をとり、遮蔽を設置し、短時間作業で出来るよ 偶然かもしれないが総建設費がJ-PARC と同じである。 うにする、ということに尽きる。 我々がJ-PARC を成功させ、多様な全ユーザーに安定に ビームを供給することができるようになれば、米国の 我々の高放射化場における保守作業の経験（あるい 施設よりはるかに経済的ということになる。 は現在の実力と言っても良い）では、ビームロスの絶 J-PARC はPS の経験をベースとしつつも大きな違い 対量は多くともPS 並みに押さえねばならない。J-PARC もある