毛皮の加工技法についてIIレイヤード加工による実物製.pdfVIP

http://dspace.bunka.ac.jp/dspace Title 毛皮の加工技法についてII : レイヤード加工による実物製 作 <研究ノート> Author(s) 根本, 賀奈子 Citation 文化学園大学紀要. 服装学?造形学研究 45 (2014-01) pp.57-63 Issue Date 2014-01-31 URL /10457/2188 Rights 文化学園大学紀要　服装学?造形学研究　第45集 57＊本学准教授　服装造形学 要旨 　前報1）では、ミンクの毛皮を使用し、ニッティング加工によるマフラーの実物製作を行った。本報では、近 年、コレクションにも多く見かけられている毛皮の加工技法の一つであるレイヤード加工を取り上げることに した。レイヤード加工は、布帛と組み合わせることにより、毛皮の最も重要な課題である毛皮量の減量化と軽 量感を出す加工法として注目されている。使用する毛皮は、フォックス一匹を使用する。細い幅にカットして、 裁断した布地に一定の間隔で、縫い付けていく方法である。製作する作品は、学生にも製作できるカラーレス ジャケットとする。結果、布帛と組み合わせたことにより、毛皮一匹で十分に足りることが確認でき、軽く柔 らかい豪華なジャケットを製作することができた。また、毛皮は部位により毛皮の質感や、裏の皮革面の硬さ や伸び方に大きな差があるため、使用する部位を選び、製作することが重要である。背中心側の毛皮は、毛足 が長く見栄えがするため目立つ部分に使用するとよい。尻尾側は、毛質が悪く厚みがあり、また、腹側の部分 も毛が薄く皮革面の伸びがあり、使用を避けるか、目立たない箇所に使用するとよい。以上のことを踏まえた 製作工程を報告する。 ●キーワード：フォックス（fox）／レイヤード加工（layered processing）／技法（technique） 毛皮の加工技法についてⅡ 　レイヤ ドー加工による実物製作　 The Processing Technique of Fur: Part 2 　Actual Production Using Layered processing　 根本?賀奈子＊ Kanako Nemoto Ⅰ．はじめに 　毛皮の加工技術は、染色、刈り毛、抜き毛といった毛 皮自体に軽さや柔らかさを出すために加工を施したもの が多いが、近年、特に布帛やニット地との組み合わせに よるニッティング加工やレザリング加工、レイヤード加 工の製品がコレクションや店頭でも多く見かけるように なった。毛皮は高級な素材ではあるが、近年、毛皮の人 気が大変高まり、加工技術の開発により、カジュアルな アイティムも多く若年層の人たちにも手の届くような素 材となった。しかし、その一方では中国、ロシアの買い 占めによる毛皮の高騰が続いている。このことにより減 量化と軽量化を図るための加工技術は一層進み、毛皮を 布帛やニットなどに組み合わせた加工した商品が開発さ れる一因となっている。 　毛皮を使った重衣料では、布帛の扱いとは異なるため 一般の人がなかなか製作しないのが現状である。また、 製作するための資料も少なく、大変な手間と費用もかか る。しかし、布帛と毛皮を組み合わせることにより、よ り簡単に軽く柔らかい、デザイン性の高い豪華な作品を 製作することができる。本学短大の専攻科の授業でも毛 皮の扱い方として本学講座2）に掲載されているスペアカ ラー、タイカラー、ボアなどの作品は教授しているが、 衣服製作までは及んでいないのが実状である。 　前報では、毛皮のニッティング加工の基礎研究の結果 から、ミンク一匹を使用したマフラーの実物製作を報告 した。引き続き本報では、毛皮の加工技法として、布帛 と組み合わせたレイヤード加工を取り上げる。毛皮は、 毛足の長いシャドーフォックス一匹を使用する。フォッ クスは水張りを行い、細く 0.5㎝幅にカットをして使用 する。カットする前の長さとカット後の長さの計測を行 う。また、カラーレスジャケット一着のレイヤード加工 で使用する毛皮の使用長を確認する。製作する作品は、 ジャケットを製作した経験のある学生には簡単に製作で きるカラーレスジャケットとし、その製作工程を報告す る。 Ⅱ．レイヤード加工について 　レイヤードとは < 層をなした、重ねた > などの意味 で、ファッションでは < 重ね着 > スタイルのこと3）を いう。毛皮でいうレイヤード加工の場合、布帛やニット 研究ノート 58 文化学園大学紀要　服装学?造形学研究　第45集 などの素材に細く切った毛皮を 2㎝から 3㎝置きに毛皮 の毛先が重なるように表面毛皮側の皮革部分をミシンで 縫い付けていく方法をいう。ま