定番！化学実験（小学校中学校版）13「物質の成り立ち」（中学校第.pdfVIP

化学と教育　52巻 3号（2004 年）
 　　実験のねらい　　
「化学変化と原子?分子」では，物質を分解する実験を行 う。分解の実験では，すでに，この「定番！化学実験」で も酸化銀や炭酸水素ナトリウムの熱分解
，
） について取り 上げたが，今回は熱エネルギーではなく，電気エネルギー を使って物質を分解することに違いがある。 ここでは，水が電気分解したときの変化の様子と，生じ た気体の性質を調べ，水は電流によって水素と酸素に分解 されたことを確認させたい。 「分解して生成した物質から元の物質が推定できること を見いだす」も授業のねらいの
つであるが，この実験で は元の物質は水であることが明らかである。したがって， 分解反応に伴って「性質の異なる
種類以上の物質に分か れる」ということを，実験を通して理解させることに主眼 をおいた方がよい。それによって「物質は何からできてい るか」という原子?分子の概念につなげて進める方が，授 業として自然な流れになる。 　　準　備　　
器具：簡易電気分解装置（ステンレス製の電極付き水槽， 目盛り付き小型試験管，ピンセット）
＊
，ゴムせん， 電源装置，クリップ付き導線，線香，マッチ，燃え さし入れ，安全めがね（人数分） 試薬：水酸化ナトリウム水溶液（
％）
＊
　　実験操作（授業展開）　　
【展開
】 ①実験を開始する前に，安全めがねをつける。 ②電解装置の水槽に水酸化ナトリウム水溶液を入れる。 ③水酸化ナトリウム水溶液が手につかないように ＊
注 意しながら，ピンセット等を用いて，試験管を水槽に 完全に沈めて空気を抜き，次の図のように電極に試験 管を差し込む。 【展開
】 ①クリップ付き導線を用いて電極と電源装置を接続す る。 ②電源装置の電流計で電流量を確認，調整しながら，電 圧をかける ＊
～
。 【展開
】 ①両極に発生した気体の体積の割合を確認する。 ②陰極側の試験管を，口を下にしたまま取り出し，素早 くマッチの火を試験管の口に近づける ＊
。 ③陽極側の試験管にゴムせんをつける。ゴムせんを電気 分解装置の液中に立てておき，試験管を上からかぶせ る形がやりやすい ＊
。試験管を取り出したら，口を上に して，ゴムせんをとり，中に火のついた線香を入れる。 【結果とまとめ】
％水酸化ナトリウム水溶液を
で電流を流した場合，
分ごとに陰極?陽極で発生する気体の上部のゴム栓から 定番！化学実験（小学校?中学校版）13
  前　川　哲　也 お茶の水女子大学附属中学校 「物質の成り立ち」（中学校第
学年） 水の電気分解 ＊
 電解実験器
　￥
　ケニス理化学機器，平成

～
年度（
）。 ＊

％水酸化ナトリウム水溶液を作るには，あらかじめビーカーに水
 を入れておき，ガラス棒でかきまぜながら，数回に分けて固体の水酸化 ナトリウム
を溶かしてつくる。溶かすときに発熱するので注意 し，温度が下がってから容器に保管する。ガラス製のびんに保管する ときは，ガラスの栓を用いると栓が取れなくなることがあるので，ゴム 栓を使用する。なお，固体の水酸化ナトリウムには潮解性があり，空気 中の水分を吸収してべとつき，薬包紙についてしまう。質量の測定は 手早く行い，また，試薬瓶のふたはすぐにしめるようにすること。 ＊
 水酸化ナトリウム水溶液は手につくとぬるぬるとした感触がある。手 についたと感じたらすぐに流水で洗うこと。また，ピンセットで試験 管を扱うさい，かなりすべりやすいため電極に試験管を立てにくい。 慎重に操作するよう指導する。また，写真用竹製の先端ゴム付きピン セット（中村理科製
本
円）を使用したり，使い捨てのポリ袋でつ まんだりすると，取り扱いがしやすい。いずれにせよ，操作の際に液面 からはねた水酸化ナトリウム水溶液が手や顔につかないように十分注 意して実験を進めるよう指導しておく。 ＊
 直流
～
程度で，気体の発生の様子に応じて調整する。 ＊
 電圧をかける前に陰極?陽極がどちらかを確認しておくこと。 ＊
 電源装置の＋極（正極）と接続した電極を陽極，－極（負極）と接続 した電極を陰極という。 ＊
＊
でも述べたが，水酸化ナトリウム水溶液が手につかないように慎重 に操作させる。もし，手についたらあわてずに手を洗うよう，指導して おく。 化学と教育　52巻 3号（2004 年）
 の長さとその比を表
に示す。 なお，このときの電流は，
であった。 　　解　説　　
純粋な水では電圧をかけても，気体は発生しにくい。そ こで，水を電気分解するには，水酸化ナトリウムや硫