呼吸器内科-JIKEIRepositoryHome.pdfVIP

東京慈恵会医科大学 教育・研究年報2010年版 とで社会に貢献できる内科医を育成することを目標 としている。 学生，研修医，レジデント，スタッフ一体となっ 教　授：桑野　和善  呼吸器病学 た新入院・退院患者症例のカンファレンスは，毎週 准教授：中山　勝敏  呼吸器病学 ～ 時間をかけて行い，症例プレゼンテーション 准教授：児島　　章  呼吸器病学 は，主に学生と研修医が行い，容赦のない質問が指 講　師：荒屋　　潤  呼吸器病学 導医よりなされるがよい修練となっている。回診， 講　師：高木　正道  呼吸器病学 呼吸器内視鏡カンファレンス，放射線科，呼吸器外 科合同のカンファレンスは，実際の症例を経験する 機会である。著名な講演者を迎えての講演会は，本 Ⅰ． 人以外の附属病院からも出席する年 回の定期的な 肺は外界と直接接するために，かつて結核蔓延の 講演会である。Up to Date の抄読会，リサーチカ 時代は，呼吸器内科医イコール肺結核医であった。 ンファレンスは，最新の臨床及び研究を学ぶ場とし 肺結核の減少とともに，近代の呼吸器病学は，肺生 ている。 理学の全盛となった。主要な呼吸器疾患が，肺生理 学，肺機能によって疾患概念，病態，治療が理解あ Ⅱ． るいは解明されていたが，生化学，分子生物学の導 ．基礎研究 入によって病態解明は飛躍的に進み，画期的な治療 呼吸器系の生理と病態を掘り下げ新たな概念を確 法が確立されてきた。しかしながら，感染症，肺癌， 立するためには，基礎的研究は欠くことのできない 気管支喘息，COPD，間質性肺炎といった，呼吸器 重要な領域である。基礎研究の大きなテーマとして 病学の主要な疾患さえもまだ十分な治療法が確立さ は，呼吸器系における萌芽（幹細胞と分化），終焉（老 れたとは言えない。しかもいずれの疾患も加齢と深 化とアポトーシス）と病態（細胞から生体レベルに く関連するために，WHO の報告によれば，2030 年 至る炎症応答）にそれぞれアプローチする。 には，これらの疾患のうち，COPD，肺炎，肺癌が， ）呼吸器系幹細胞の確立に関する研究 全世界における死亡原因の ， ， 位になること 肺は外界から空気と同時に様々な毒性物質や感染 が予想されている。高齢化社会の到来に伴い，呼吸 性微生物を吸引するため，常に細胞障害と再生治癒 器疾患は人類が取り組むべきもっとも重要な課題に とが繰り返される環境にある。つまり肺傷害とそれ なると予測されている。 に対する再生治癒機転のバランスが様々な病態進展 呼吸器疾患は多彩であり，性格の全く異なった疾 を決定する因子となる。我々は肺における再生のメ 患が混在し，それぞれが急増しているために，その カニズムを明らかにするとともに iPS 細胞を用いた 病態解明と治療を確立あるいは実行する呼吸器内科 呼吸器系幹細胞の