視覚障害の観点からロボット工学に望むこと.PDFVIP

視覚障害の観点からロボット工学に望むこと 新潟県保健衛生センター 信楽園病院 内科 山田 幸男 １． もっとも困るのは歩行（移動） 目が不自由になってもっとも困ることは歩行（移動）と文字の読み書 きといいます。とりわけ困るのが歩行（移動）です。 自分の好きな時に外出するには白杖歩行ですが、その技術の習得は容 易ではありません。 ２．必要なこころのケア 目が不自由になると多くの人は死を考えます（図１参照）。 目の不自由なことが原因で「死んでしまおう」と考えた人の割合 盲 (58名) 60.3% 低視覚 (31名) 48.8% 0 20 40 60 80 100％ 視力の残っている人で視力の悪化や失明に 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　対する不安を持つ人の割合 盲 (26名) 80.8% 低視覚 86.7% (30名) 0 20 40 60 80 100％ 図１ 「目が不自由になったために死んでしまおう」と考えたことのある人 １） （上図） 。 また半数の人は、うつ病、またはうつ状態となります（図２参照）。 そのため、視覚障害者にはこころのケアは欠かせません。 ２） 図２ 目の不自由な人のうつ病、うつ状態の人の頻度 （性別不明者３名） ３． ロボットに期待すること 視覚障害者にとって盲導犬は、歩行（移動）の手助けであるとともに、 癒し（こころのケア）という二つの大きな役割があります。 ところが盲導犬の世話（糞の後始末や健康管理など）は障害者には容 易なことではありません。体力のない人や高齢者では、犬の力に負けて 転倒する人も少なくありません。 そこで期待が高まるのが盲導犬の代わりをするロボット、盲導犬様誘 導ロボット、盲導犬もどき誘導ロボットです。 よく利用する２～３のルートをロボットにインプットして、その地図 上の歩行（移動）をリードしてくれたら大助かりです。乗り物に乗ると きには持ち上げて中に入れる程度の重量で。 視覚障害者は、盲導犬を家族、わが子のように大切にします。 盲導犬様誘導ロボットも、話すなどの癒しの役割を併せ持つと最高で す。 ロボットの値段は、盲導犬一頭の育成にかかるお金の分くらいでもよ いの考えます。 今後一層すすむ視覚障害者の高齢化を見据えて、ゆくゆくは乗れる誘 導ロボットがいいですね。 視覚障害者のロボット学者の皆さんへの期待は計り知れません。 １）山田幸男、大石正夫、ほか：中途視覚障害者のリハビリテーション（第６報）視覚 障害者の心理・社会的問題、とくに白杖、点字、障害者手帳、自殺意識について。眼 紀 ５２：２４－２９、２００１． ２）山田幸男、平沢由平、大石正夫、ほか：中途視覚障害者のリハビリテーション（第 ９報）視覚障害者にみられる睡眠障害とうつ病の頻度，特徴。眼紀 ５５：１９２－ １９６、２００４． （寄稿日 ２０１３年７月１８日）