災害時アクションカードを活用した学校の津波防災管理の高度化要点.pdfVIP

災害時アクションカードを活用した学校の津波防災管理の高度化 1 2 3 4 5 中野 晋 ・粕淵義郎 ・永田雄大 ・金井純子 ・蔭岡弘知 1 徳島大学教授 環境防災研究センター（〒770-8506 徳島市南常三島町2-1） 2 元徳島大学助教 環境防災研究センター（〒770-8506 徳島市南常三島町2-1） 3 徳島大学大学院先端技術科学教育部博士前期課程 （〒770-8506 徳島市南常三島町2-1） 4 徳島大学技術補佐員 環境防災研究センター （〒770-8506 徳島市南常三島町2-1） 5 徳島県教育委員会体育学校安全課班長 （〒770-0941 徳島市万代町1-1） 【事例1】石巻市立門脇小学校 1. はじめに 地震の際に学校に残っていた児童約230 名全員を校庭 東日本大震災では主に津波で，約1 万9 千名が犠牲に の西側にある墓地脇の階段を通って，日頃の訓練通りに なっているが，学校関係でも東北３県（岩手，宮城，福 裏山の日和山公園に無事避難させた．その夜は親が迎え 島）で園児・児童・生徒553 名が亡くなっている．その に来なかった40 名とともに石巻高校にて夜を明かすこ 内，学校の管理下で亡くなった児童らは 75 名で，残り とになった．同校は津波と火災で全壊したため，3 月末 478 名は自宅や保護者に引き渡された後に犠牲となって までに門脇中学校で間借りをして再開することを決定 いる （中野ら，2013）．今後も南海トラフ巨大地震など し，4 月22 日から学校再開に至っている．（宮城教育文 による大津波被害が危惧される中，津波時に児童が犠牲 化センター，2011 ；池上正樹，2011） にならないための防災管理の高度化は喫緊の課題であ 【事例2】私立日和幼稚園 （石巻市） る． 当園は門脇小学校の児童が避難した日和山の中腹に 徳島県教育委員会では震災直後から学校防災管理ガ 位置する．地震発生直後に園児 12 人を乗せた送迎バス イドラインの見直しを始め，第1 著者も学校防災アドバ が出発し，石巻市南浜町などを回って5 人を降ろした後， イザーとしてガイドラインの策定や教員研修等に深く 門脇小学校校庭に停車する．その際，園の職員が小学校 関わってきた．ガイドラインでは災害後の保護者への引 校庭に駆けつけ，大津波警報が発令されているので至急， 渡しについての判断基準の明確化，自己評価チェックシ 園に帰るよう伝えるが，その後も2 人を引き渡した後に ートを用いた定期的な点検方法など，多くの改善を加え 園に向かうが途中で津波に巻き込まれ，園児5 人が犠牲 たが，特に緊急時初動対応の高度化を図り，PDCA サイ になる．（河北新報，2011 年3 月27 日） クルによる継続的改善を促すためのツールとして，災害 【事例3】石巻市立吉浜小学校 時アクションカードを新たに提案し，防災管理マニュア 地震発生時，4，5 年生 14 名と教職員7 名が校内に残 ルの作成に加えてこれの活用を強く推奨している． っていた他，隣の石巻市北上総合支所には教員4 名が物 本論文では今次津波による学校での被災事例を通し 品借用のため出向いていた．地震直後，校内の全員と総 て，学校での津波防災管理の考え方について整理し，そ の上で災害時アクションカードの活用方法や普及方法 について報告する．その上で，学校防災での津波防災専 門家の役割について考究する． 2. 東日本大震災での教育機関の被災と対応事例 新聞や報告書などの公表資料