自闭症ADHD発达障害増加原因.PDF

など の としての 自閉症・ADHD 発達障害増加 原因 環境化学物質 　 　 ――有機リン系，ネオニコチノイド系農薬の危険性（下） きむら―くろだ　じゅんこ 木村―黒田純子 東京都医学総合研究所脳発達・神経再生研究分野こどもの脳プロジェクト くろだ　よういちろう 黒田洋一郎 環境脳神経科学情報センター 前号（上）で，近年の日米欧における自閉症など 症における①炎症反応を含む免疫異常の関与2， 発達障害1児急増の原因は，従来言われてきた ②酸化ストレスによる障害3，③ミトコンドリア 「遺伝要因」では説明がつかず，環境要因が主要 の機能障害4，④有害な環境化学物質の関与，を であること，ことに感受性の高い胎児期や小児期 挙げている1。さらにこれらの4 点については， などに農薬やPCB などの有害な環境化学物質を 自閉症との因果関係を示唆するデータがあり，互 曝露すると発達障害のリスクが高くなることを述 いに関連がある上に，①～③の病態は，④の農薬 べた。環境要因としては，環境化学物質だけでな く，放射能（コラム1），感染症，栄養状態，生活習 ＊2―免疫異常：自閉症児の脳内で炎症性サイトカインが高く， 炎症時に見られる活性化アストロサイトや自己抗体が検出され 慣，さらに家庭 ・学校 ・社会環境の著しい変化な るケースが多く，免疫異常が自閉症発症の一因という説がある。 ども当然関わっており，これらが複雑に影響し合 免疫異常や炎症反応は何らかの感染症でも当然おこるが，特定 った相互作用の結果と考えられる。環境要因のな の地域や季節などの傾向が出るはずで，感染症だけで近年の発 達障害増加を説明できない。一方，免疫異常をおこす環境化学 かでも環境化学物質の影響に特に注目するのは次 1 1 物質は多数あり，ニッケル ，水銀 ，ディーゼル排気など大気 の2 つの観点による。第一に，子どもの脳の機 汚染物質1 2 2 ，有機リン系農薬 ，ピレスロイド系農薬 ，ネオニコ 能発達に重要な，複雑精微な膨大な数の遺伝子発 チノイド系農薬3 でも報告されている。大気汚染物質は，最近 注目されている PM2.5，PM0.1 なども含んでおり，これらの粒 現を先天的，後天的に制御しているホルモンや神 4 子には有害金属や多種類の農薬が検出されている 。 経伝達物質などが，環境ホルモンや殺虫剤（農薬） ＊3―酸化ストレス：神経細胞，ことに発達期の