东京都微生物検査情报-idsc.tokyo.PDFVIP

ISSN 1883-2636 第36巻 第9号 東京都微生物検査情報 2015年9月分 東京都微生物検査情報 月 報 MONTHLY EPIDEMIOLOGICAL RECORD, TOKYO http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/ 東京都における食品中の Listeria monocytogenes 検出状況 リステリア症とL. monocytogenes はバイオフィルムを形成し長期間生存するため、 リステリア症は L. monocytogenes （通性嫌気 加工食品の汚染は原材料由来または加工施設の 性のグラム陽性、無芽胞の短桿菌）を原因とす 環境からの二次汚染が考えられている。 る疾患で、L. monocytogenes は食肉、魚介類お 東京都に流通する食品の L. monocytogenes 汚 よび環境中に広く存在する。 染状況 L. monocytogenes に感染すると、風邪様症状 2000年から2012年の13年間に東京都内で流 や嘔吐、下痢等の急性胃腸炎症状を示すが、健 通した ready-to-eat 食品として、ナチュラルチ 康な成人では発症しないことも多い。一方で、 ーズ、生食用食肉（ユッケ用肉等）、食肉加工品 基礎疾患、免疫機能が低下した人や高齢者など （生ハム、ウインナーソーセージ、ミートボー では、髄膜炎や敗血症に進展する場合があり、 ル等）、生食用鮮魚介類（刺身等）、魚介類加工 重症化すると致死率は 15～20%に及ぶ。また妊 品 （スモークサーモン、辛子明太子等）、漬物（野 婦が感染した場合には、妊婦自身は無症状か軽 菜）と、調理用食肉（牛肉、牛内臓肉、豚肉、 症であっても、胎盤を通じて胎児に感染し新生 鶏肉）について、L. monocytogenes 汚染状況を 児敗血症や髄膜炎を起こしたり、流産、早産や 調査した。 死産の原因となることがある。 ready-to-eat 食品で はナチュラルチーズ 厚生労働省院内感染対策サーベイランス 0.3%、生食用食肉 3.1%、食肉加工品 1.7%、生食 （JANIS）では、血液または髄液から L. 用鮮魚介類 2.3%、魚介類加工品 3.3%、漬物 2.1% monocytogenes が分離された患者をリステリア から、調理用食肉については牛肉 13.9%、牛内 症患者と定義し、患者数は年間 200 人程度、75％ 臓肉 21.2%、豚肉 21.7%、鶏肉 38.0%から L. 1） 以上が高齢者としている 。 monocytogenes が検出された（表 1）。 リステリア症の主な原因は汚染食品等の喫食 であるが、原因食品を特定することは難しく、 表1．食品からのL. monocytogenes 検出状況（2000-2012年） 国内で食品媒介リステリア症の集団発生と証明 食品 検出数（％） されたのは、 2001 年に北海道で発生し