牛结核 - 鹿儿岛大学共同兽医学部.doc

牛が関係する主な人畜共通感染症 鹿児島大学　岡本嘉六（2006年6月） 日本の中では、島国の特権として他国から伝染病が侵入する危険性が比較的低いこと、野生動物種が少なく頭羽数も限られていることなどから、ヒトや家畜の伝染病は「100％」制御できて当然であると信じる風潮が蔓延っている。野生動物を含む自然保護運動が広がることは好ましいことであるが、こうした島国の特殊性を理解しておくことが大切である。すなわち、日本ではほぼ消えてしまった家畜の伝染病が、大陸では野生動物の間で流行しており、それがヒトや家畜への感染源となっていることを、獣医師は伝えなければならない。食の安全性において、様々な人畜共通感染症があることを正確に伝えないと、「100％安全」の神話がまかり通ることになる。テレビでBSE牛および変異型ヤコブ病患者の映像を繰り返し流したため、「世の中で最も恐ろしい病気」というイメージが刷り込まれてしまった。JICA関係者から入手した発展途上国における狂犬病予防キャンペーン用の映像に、回復見込みのない狂犬病患者が手足を縛られてベッドで暴れている姿が何人も登場し、いっそのことこれを全国放映したらBSE問題の正しい理解が広まるのではとも考えた。肉と家畜が結び付かない状況で、「食の安全」を叫んでも虚しいだけである。この辺りの問題については、毎日新聞学芸課　福岡賢正氏が書かれた「隠された風景：『』THE INCIDENCE OF TB IN CATTLE - GREAT BRITAIN）」であるが、この数値を日本の現状と見比べてもらいたい。日本の水準からすれば数十年前の罹患率である。牛結核病が新たに発生した農家が、増え続け、毎年数％に及んでいる。それに既発生農家（移動制限下の牛群数）を加えると、その数倍となる。頭数別にみると、検査頭数当りの割合が1997年の0.14％から2005年には0.531％になると推定されている。 表1.　英国における牛結核の頻度：群別（2006年3月4日現在） 検査牛群数(1) 移動制限下の牛群数(2) 非制限群の検査数(3) その内の新規発生牛群数(4) その内の新規確定牛群数(5) 非制限群の内新規確定牛群の割合(6) 1997 35,386 1,657 32,739 1,203 503 1.5% 1998 38,214 2,109 34,839 1,517 720 2.1% 1999 42,692 2,397 38,688 1,660 875 2.3% 2000 42,158 2,512 37,770 1,734 1,044 2.8% 2001* 13,811 1,721 11,243 794 511 4.5% 2002(p)** 52,321 4,189 44,662 3,320 1,907 4.3% 2003(p) 58,318 5,507 47,265 3,219 1,657 3.5% 2004(p) 58,704 5,242 48,786 3,349 1,767 3.6% 2005(p) 57,794 5,683 46,574 3,659 2,043 4.4% 註：データは、Vetnetから得た一部である。全ての培養検査が完了し、最終データの検証が終わるまで、2002年度以降ののデータは暫定的であり、改訂される。 (1)　左の期間内に少なくとも1頭のツベルクリン皮膚テストが実施された群。 (2)　結核発生のため所定期間常時移動制限を受ける群。 (3)　結核発生による制限が終了した群について所定期間内に何らかの検査が実施された数。あるいは、所定期間内に出荷先の食肉センターにおける通常検査を受けた数。 (4)　以前は結核がなかった群で、所定期間内にツベルクリン検査陽性または食肉センターにおける通常検査で結核の疑いが掛けられた数。 (5)　その後の検査で結核と確認された新規発生群（第4欄）。 (6)　第3欄に対する第5欄の割合（％）。 *　2001年のデータは、他の年とは比較できない。口蹄疫の発生期間中、結核検査はかなり減らされ、必然的に、リスクがより大きな地域に絞らされた。 **　2002年のデータは、他の年とは比較できない。（口蹄疫発生による残務のため）検査期限を過ぎた群についての検査が集中した。 (p)　データは、現時点で暫定的である。 表2.　英国における牛結核の頻度：頭数別（2006年3月4日現在） 検査牛群数(1) 検査総頭数(2) 陽性または直接接触のため強制的殺処分された頭数 検査陽性率（％） (4)/(2) 計(3) 陽性頭数(4) 直接接触(5) 1997 35,386 2,224,687 3,669 3,213 456 0.144 1998 38,21