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インターカレーション法による高純度雲母の合成と その商品化 ＊１ 立山 博 （九州工業技術研究所） 要旨 九州地域に賦存する地域未利用資源の有効活用の研究からスタートし、その成果をヒン トに、企業との共同研究で、インターカレーション法という省エネ型の新規な合成法を開 発し、高純度雲母の合成に成功した。各種分析機器を用いてその生成プロセスを解析した 結果、タルクの端面から層間に Na イオン或いは K イオンがインターカレーし、膨潤性 Na 雲母と非膨潤性K 雲母が生成すること、特に、膨潤性Na 雲母については、Na イオンが特異 な挙動を示す結晶構を有すること、また、水溶液中での無限膨潤機構、膨潤性Na 雲母の 界面化学的特性、並びに水溶液中での規則的長周期構とるメカニズム等を明らかにした。 これらの基礎研究をベースに、非膨潤性 K 雲母は、高純度で純白、ソフト（低硬度）等 の特色を生かして、化粧品、電子機器用基板、高精度塗料等の各種の製品化に成功し、販 売が続いている。また、膨潤性Na 雲母に関しては、ナイロンやポリエチレンテレフタレー ト（PET）とのナノコンポジット化に成功し、ナイロン系ナノコンポジットは、高耐熱性や リサイクル性など特色を生かして、各種の高精度エンジニアプラスティクとして製品化さ れ、販売が続いている。 本研究開発において、商品化まで進んだ最大のポイントは、共同研究企業の研究者の方 が、自分の研究内容に惚れ込んでいただいたこと、さらに、現在の産総研のコーディネー タのように、共同研究企業の技術者の方々が多くのユーザ企業を回り、各分野のマーケッ ティング調査を実施し、さらに、そのニーズ情報を収集していただいたことである。 １）はじめに 本研究開発は、研究の立案段階、実施段階、発展段階と 3 段階に分けられる。そこで、 本研究の立案段階で、どのようにして本研究開発のテーマを見出したかを紹介する。次に、 研究の実施段階で、実験室レベルから工業生産レベルへの移行の困難さ、また、製品の販 売には、以外にも、しっかりとしたメカニズムの解明など、基礎的研究が重要であること を紹介する。最後に、発展段階で本研究成果である各ユーザへの商品化への道のりを紹介 する。 ２）研究の立案段階 （１）立案の経緯 ○九州内に賦存する未利用資源の有効利用は、当時、地域研究機関の重要なミッションで あった。 九州地域には、シラス、サンゴ石灰岩、風化花崗岩、低火度天草陶石等、未利用資源が 多く賦存するため、その有効利用を図って、九州地域の産業の高度化と新たな産業を生み 出すことが地域試験所の重要なミッションであった。私は、風化花崗岩の有効利用と未利 用天草陶石の有効利用に関するプロジェクトに参画した。 （A）風化花崗岩の有効利用 ○風化花崗岩を工業原料として有効利用するための研究の実施 風化花崗岩は、九州地域から中国地域に広く分布し、大雨の時には、土砂崩れの大きな 原因となる厄介者であるが、これが、工業製品となれば、地域の産業に大きく貢献するこ とは、間違いなく、「地域未利用資源の活用化技術に関する研究」として、昭和 52 年度か ら昭和55 年度までの4 年間実施された。選択粉砕等の新しい技術開発により、石英、長石、 雲母、粘土鉱物と分離することに成功した。私は、雲母の高度利用に関する研究を実施し た。 ○風化雲母の高性能化に成功 風化花崗岩中から風化した雲母の分離回収は、対局磁選機で行った。風化雲母は構中 に水分子を含むため、低絶縁性であった。そこで、絶縁性を向上させるために、KF と風化 雲母を混合し、高温下で反応させ、H O 分子をK イオンに置換し、さらに、風化雲母の OH 2 イオンをF イオンに置換することにより、風化雲母の高性能化に成功した。 （B）未利用天草陶石の有効利用 ○世界的に有名な有田焼の原料の枯渇化への対処として未利用天草陶石の有効利用に関 する研究を実施 九州は、有田焼、伊万里焼、薩摩焼等、焼き物の産地として江戸時代から