桑下东窑迹.pdfVIP

SK12は、出土遺物から17世紀半ばの構築と考えられる。SK12の西４mでは石囲いの溜井 戸SE01を検出し。遺構からは近世の徳利、柳茶碗等が出土した。残る下の２段は、後世の 耕地造成の影響を受けていたものの、竪穴状の遺構SK02を確認した。SK02は半分以上を 削られているものの、壁面は強く被熱している。遺物は擂鉢が出土しているが、あるいは 小窯に類するものの可能性がある。 C 区 Ａ区とＢ区にはさまれた、谷間の調査区である。谷の東寄りは自然流路と化しているも のの、調査区西寄りでは多数の柱穴・土坑・区画溝を確認した。このうち土坑SK21からは、 炭化物を多く含む埋土と拳大の石が出土した。形態から火葬墓と考えられる。また柱穴の 中には打ち込み柱が多く見られ、P105では柱とともに礎板が出土している。出土遺物は大 窯の年代観を持つものが多く、完品が比較的多い事も特徴である。このほか漆椀・箸・木 製の鍬・銅製金具などが出土している。谷の埋没後は水田として利用されていたが、出土 遺物からは近世中期以降の開墾が想定される。 D 　 区 調査区の西端、西に傾斜する斜面及び谷の部分である。その西に桑下城跡が隣接する。 明確な遺構は確認できなかったが、谷に堆積する赤色土から手水鉢が1個体出土した。そ の下層の白色粘土層からは匣鉢片が出土したが、崩落の危険が予想されたため、トレンチ よる確認に留めた。 E 　 区 窯体SY01およびその西に展開する平坦部をさす。SY01は窯体の床面及び壁面の一部が 残存しているものの、窯体右側は既に流失していた。中軸線はほぼ南北方向、残存長は約 2.4m、燃焼室の幅は約2m、焼成室床面の傾斜は約26°である。燃焼室には小分焔柱が、焼 成室には分焔柱および支柱の痕跡がある。 SY01の西側では作業場が確認された。作業場は調査区の大半で連続して展開しており、 主要遺構配置図（1:200） 31 斜面では基盤岩を掘削し平坦面を確保している。また末端部では粘土が混じった土を貼り、 補強している。このうちSX02は方形のプランを持ち、壁際に排水溝を施す。またSX03の 南端ではロクロピット及び方形の土坑が確認された。丘陵の頂部には掘立柱建物SB01が 検出された。（鵜飼雅弘） ま と め 桑下東窯跡の調査では新たな発見が相次いだ。第１はA区のロクロピット群である。約 50㎡の範囲から63基を検出した。またE区でも３基を検出した。第２には丘陵全体に土木 事業が施され、窯体の周辺には石敷、竪穴状作業場、住居跡もしくは作業施設、縁辺部に は盛り土がみられ、大規模な作業空間を造成していた事である。第３にはC区の谷の柱穴 群とB区の土壙墓である。今まで見過ごされていた谷部より遺構を検出した事により、今