评论及杂録-J-Stage.PDF

276(26) 岩 着 礦 物 礦 床 學 評論 及 雜 録 珪質海綿岩に關する二,三の問題 理學博士　高 橋 純 一 緒説　地球化學的輪廻に於ける珪酸と石灰は,對立的に生物媒介によつで 水成岩を生成するものである。然し石灰岩の大部は生物岩に屬するけれど 評 論 及 雜 録 277(27) も,珪質岩は必しも然らず,その大部は屑碎岩であつて,風化の殘滓物又は その生成物の堆積によるものを主とし,生物によつて攝取分泌されて遂に 堆積するに至るものは,寧ろ特殊な珪質岩と見做されて居る程である。 有機性珪質岩の原料たる生物は,放散虫,珪藻,及び海綿を主とするもの であるが,こゝには海綿を主とする水成岩に就て,その岩石學的に注意を要 する事項に就て述べる。海綿の骨針は現世の海底堆積物中に2～3%の 程 度に發見される事は多いが, 50%以 上に上る例は今日迄の調査の結果から 見れば甚だ稀れで, Kerguelen島 附近219米 の海底その他二,三を數ふるに 過ぎない。1)然るに地質時代の水成岩には殆んど全部海綿骨針より成る所謂 以下の骨針を含む海綿砂岩(頁 岩)の 如きは,本邦の石油三紀層等にも最も 普通に見受けられるものである。 等しく珪質生物でも,放散虫や珪藻は,現世の海底でも地質時代の岩石て も,殆んど純粹な堆積を形成するに反し,獨り海綿の純堆積が現世に稀れで 地質時代にのみ發達する事實は,海綿岩に關する第一の疑問である。 地質時代の岩石中に海綿の發見されるのは主として海成層であつて,淡 水層では石炭紀及び第三紀に甚だ稀れに知られたのみである。而かもそれ 等は殆んど全部海綿骨針で形成された海綿岩で,ゲーズには淡水産のもの が知られて居ない。現世の淡水底の堆積物中には,英佛では未だ海綿が發 見された例がないが,カナダには其例が多く,本邦でも琵琶湖其他に知られ て居る。 海綿ゲーズ　ゲーズは珪酸岩(SiO2:92～76%)で 特にアルカリに可溶性 なる珪酸に富み,海綿骨針(時 に珪藻,稀れに放散虫)の 外に石英等の屑碎 (1) J. Murray, A. F. Renard, Deep-Sea Deposits. (2) 本 誌,第 四巻 五,六 號 。 278(28) 岩 石 礦 物 礦 床 學 物(時 に50%に 達す),及 び海綿化石を含み,石 基はオパールを主 とし,玉髓 の發達を見る事あり,多 少の粘土物の外,殘 跡的な る方解石を倉おするもの である。その色澤 も甚だ雑多で,柔 軟多孔質 なるものより堅緻なる燧石状 の種類を包含 し,而か も堆積學上 の特殊現象(accidents)に 屬するものに非 らず して,一 般的なる水成岩を構成するものである。 以上は カユーに依つて擴張 された ゲーズの定義であるが,そ の初めは 巴 里の盆地の白堊紀層に發達する緑砂(gres vert海 緑石砂)及 び灰状白堊 と同種の岩石に屬 し,主 として 英佛盆地の白堊紀層に産する海綿化石を含 む堅軟異相の岩石を指稱 したものである。かゝ る岩層は厚さ80～100mに 達する事 も稀れならず,概 して粗軟なるも,その一部は硬化して燧石状を呈 し,そ の多孔質なるもの5比 重は1.5前 後であると云ふ。 標式的なゲーズの可溶性珪酸の分量は,そ の使用するアルカ リの種類,抽 出の際に於ける温度 と時間によつて相違する事は云ふ迄 もない。ゲーズの 粉細せるもの1grを5%の 炭酸曹達50ccを 用ひて4時 間熱水浴上にて抽 出せる結果に就て見れば,そ の可溶成分は4.5～5%の 範圍に於て殆んど一 定であると云ふ(cayeux)。 礬土含量は種類 によつて1.5～7%