油烟除去装置.pdfVIP

第 41 回 優秀環境装置 日本産業機械工業会会長賞 集塵装置株式会社 １．開発経過 絶縁ワニスを使用する加熱硬化炉において、絶縁ワニスが乾燥・硬化する過程で、高温の油 煙が発生する。工場内環境や人体への影響を考慮し、油煙を除去することが製造現場から求め られている。 ① バブリング式湿式集塵機にて試みるが、水で油煙を捕集するだけでは、油脂の塊が発生 し、集じん機内に油脂が付着・固化し、除去性能低下と機内掃除の手間が多く、却下と なった。 ② フィルター式集塵機にて試みるが、フィルターに油煙が付着し過ぎて油煙が漏れてしま い、頻繁にフィルター交換が必要となるため、コスト増になり却下となった。 ①及び②は、従来から対応策として行われているが、油煙の除去やコスト対応のニーズを 満足するものではなかった。 当社では、油脂は冷えると一旦液状となってから固まるという習性を利用し、先ず油煙を間 接的に外気にて冷やすことを考え、油煙温度を下げることにした。次に集塵サイクロンの特性 である分離機能を利用し、油と空気を遠心分離させ、かつサイクロンを水冷ジャケット式にし て油煙冷却を連続して行なった。この水冷ジャケット付サイクロン方式によって、油を固まる 前のオイル状にて回収することが出来るようになった。この方式により、従来のやり方に比べ 捕集性能が格段に上がった。保守はオイル回収だけで済むので、手間がかからなくなった。 ２．装置説明 2.1 構造、原理 加熱硬化炉において、絶縁ワニスを塗布した中～大型コイルを製造する際に、加熱・乾 燥・硬化する工程において高温かつ微粒子な油煙（1μm 以下）が発生するため、それを除 去する装置である。 発生した油煙を、①外気で一次冷却し、②サイクロン（水冷ジャケット付）に移し、サ イクロンの特性により壁面に付けた冷却ジャケットに油煙があたり、二次冷却し、③油煙 粒子が、塊となりオイル状になるため、サイクロン壁面を流下し、④液化ワニス溜めに集 められ回収される。 －31－ フロー図 サイクロン概観 －32－ 2.2 特許の有無 特許出願中「冷却型成分除去サイクロン装置」（特願‐2014-005652） 2.3 性能 水冷ジャケット付サイクロン式にて、10 時間連続稼働し性能試験を 1 週間行なった結果、 オイル回収量は継続的に定量で安定し、吸引状態に変化は無かった。また、機内部に油脂 状の固着や機外部への油煙の漏れも無く、サイクロン内の清掃も一切無くなった。 捕集効率を数値で表すと、前項開発経過にある、①バブリング式湿式集塵機で 75％、② フィルター式集塵機で80％、水冷ジャケット付サイクロン方式で 90％となった。 2.4 維持管理 水冷ジャケット付サイクロン方式 ①運転・操作性 機内の変化、風量やガス温度の変動が生じないため、何も調整することはない。 ②メンテナンス性 機内への付着や消耗品がないため、月に一度液化ワニス溜めのオイル回収を行なう だけでよい。 ③維持管理コスト 交換部品や消耗品が一切ないため、オイル回収費用と年１度の保守点検で年間約 10 万円程度である。 従来からの、バブリング式湿式集塵機やフィルター式集塵機での捕集は、運転・操作性 （機内の油脂付着・フィルター目詰まり）、メンテナンス性（清掃時間・フィルター交換頻 度）、維持管理コスト（年間 225 万～300 万円）すべてにおいて問題があるため、水冷ジ ャケット付サイクロン方式が秀でていると考えられる。 2.5 経済性