人形峠湖盆.PDF

講演要旨＊ 堆積岩に伴う日本のウラン鉱床の問題点 人形峠地区のウラン鉱床の層準 肥田　昇 小村幸二郎 　「目本のウラン鉱床の問題点」というより，今日の研 　鳥取県と岡山県との境界部に位置する人形峠付近には 究発表会のこれから進められて行く各発表の序としたい。 峠鉱床をはじめ，広い区域にわたって，後生堆積型ウラ 　日本のウラン鉱床，とくに堆積岩に伴うものについて ン鉱床が分布している。これらの鉱床は，本邦ではじめ 数年来ウラソグループとして調査研究を進めてきたが， て発見，開発された堆積型鉱床として，資源的にも地質， 現在進行中ながら，概括的には，代表的な地域について 鉱床学的にも注目され，現在，動力炉・核燃料開発公団 その大要をまとめる段階に到ることができた。 によって採掘および探鉱されている。 北の方から，北海道南部，秋田一岩手県，新潟一山形 　この付近の地質は，基盤となっている三郡変成岩類・ 県，宮城県大内，岐阜県東濃，京都府奥丹後，岡山r鳥 木地山層群・山陰型花南岩類と，これらを不整合におお 取県，島根一広島県，および鹿児島県垂水などの各地域 う新第三紀中新世の西郷層・河原層，鮮新世初期の堆積 に分布している堆積岩に伴うウラン鉱床について概観す 物とされている三朝層群，および大山火山噴出物を主と ると， する第四紀最新世の地層によって構成されている。これ 1）　ウラン鉱床はいずれも花闘岩類を基盤とし，主と らのうちでウラン鉱床を含むのは三朝層群だけである。 　して湾入部・湖沼・河川を埋めた礫岩・砂岩・凝灰 三朝層群は，火山砕屑岩を主とする湖成堆積岩からな 　岩・爽炭層などの一部に存在する。 り，一部に河成および陸成堆積岩を伴う。本層群は，岩 2）含ウラン層の地質的区分は中新世のものが多く， 相によって，上位の中津河（高清水）層と下位の人形峠 　一部中新世一鮮新世のものが含まれている。これ 層・小鹿層とに区別され，全体の厚さは約500mと推定 　らの堆積岩は，それらに産する植物化石などによっ されるが，現在は，その大部分が削剥されているので， 　て，その種類とその保存の良さから比較的温暖な気 厚さ20Gm前後が分布しているにすぎない。本層群は， 　候と・静穏な環境のうちに堆積している。 人形峠付近をほぼ北東一南西方向に走る基盤の隆起部 3）　ウラン鉱床中に含まれるウラン鉱物としては，閃 （高清水一高山脊梁帯）を境として，北部の三朝湖盆と 　ウラン鉱・人形石・ウラノフェン・コフィン石・燐 南部の人形峠湖盆とでは，下に示すように，岩相を若干 　灰ウラン鉱・燐パリウムウラン石などである。 異にする。 4）　ウラン鉱床を形成したウランの起源については， 　　　　　　　　　三　朝　湖　盆 　これからの発表者によって明らかにされるが，現在 　人形峠湖盆 　のところ基盤花歯岩中のウランの溶出後，沈殿濃集 中　津　河　層 白兎層 　したと考えるのが適当であるが，一方また局所的に 凝灰角礫岩 砂岩・礫岩 　はある意味での「熱水性」起源の考え方もなされて 火山礫岩 中　津　河　層 火山礫凝灰岩 凝灰角礫岩 　いる。