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中国の製造物責任法（梁，小口・陶） 111 講 演 中国の製造物責任法 陶 小 雲 　 　 　梁 口 　 明 彦 太 慧 　 共星 訳 」 【 4 D り 乙 ∩ － まえがき 製造物に関する中国民法の規定 中国製品質量法 日中両国の製品物責任法の比較 結　び 　本誌に掲載する梁慧星氏（中国社会科学院法学研究所教授）の二本の論稿は，早稲田 大学比較法研究所・同法学部・法学研究科と中国社会科学院法学研究所との間の学術交 流協定にもとづく日中法律交流シンポジウムでの報告原稿である。今回は日中両国の不 法行為法の比較研究を課題とし，中国側からは梁慧星氏の以下に掲載する二本の報告が なされ，日本側からは，日本の製造物責任法について浦川道太郎法学部教授による，ま た交通事故損害賠償法については田山輝明法学部教授による報告がなされた。日本側の 両教授の報告の内容は，中国の法律雑誌に掲載される予定である。なお，この共通論題 とは別に，王家福前社会科学院法学研究所所長（現在全国人民代表大会常務委員会委員 で，全国人民代表大会法律委員会の委員）による「中国市場経済下の立法状況」という 論題での報告がなされた。あわせて記しておく。（小口彦太） 1まえがき 　中国は「改革開放」の前に長期にわたって，高度の中央集権的計画経済体制 をとってきた。経済の発展がひどく制約され，長年にわたって残っている問題 の一つはその商品の不足であって，消費者への法律上の保護は重視されられな 112　　比較法学29巻1号 かった。1979年から1982年にわたって，前法制委員会が作成した四つの民法草 案には製造責任に触れた条文がなかった。1985年以前に発表した民法の著作や 論文などでは製品の欠陥による損害の民事責任に全く言及していない。 80年代の前半，経済体制の改革と対外開放の実行によって，市場経済は大い に発展した。多種の家電，化学製品，化粧品，いろいろな飲料品等が大量に生 産され，消費財の需要を満足させると同時に，深刻な社会問題を産み出すよう になった。製品の欠陥による人身と財産の損害が度々発生している。一部の会 社がさかんに粗製濫造し，劣悪品を合格品と偽り，偽物を本物と偽って，広範 囲に消費者の人身，財産に損害を与えている。それにつれて，立法者が米国の 厳格責任とECの関連製造物責任の規定を参考とし，1986年民法通則第122条に 製造物責任についての原則規定を取り入れた。この条文は中国製造物責任法の 雛形でもある。 製品質量法は1986年4月5日に公布された工業製品質量責任条例を基礎とし て1989年以来起草が開始された。本法は1993年2月22日公布され，同年9月1 日より施行された。製品質量法第四章は民法通則第122条にもとづき，製造物責 任を規定したものであり，現行の製造物責任法をなしている。 2　製造物に関する中国民法の規定 　1民法通則 典のような地位に相当する。民法通則には9章156条を内容としている。各章の 標題は次の通りである。 第一章　基本原則，第二章　自然人，第三章　法人，第四章　民事法律行為 と代理，第五章　民事権利，第六章　民事責任，第七章　訴訟時効，第八章　渉 外民事関係の法律適用，第九章　附則。 　2　不法行為に関する民法通則の規定 中国民法通則は第六章で契約違反の責任と不法行為の責任を統合して，民事 責任と称す。現行法規によれば不法行為は一般不法行為と特殊不法行為に分け， 前者は過失責任とし，後者は無過失責任或は推定過失責任と