漢字表象が空間的注意に及ぼす影響.pdfVIP

梅林　薫 家政学部生活科学科生活科学専攻 （2012 年9 月20 日受稿） Effect of Kanji Representation on Spatial Attention UMEBAYASHI Kaoru Department of Home and Life Sciences, Maj or in Home and Life Sciences ’ Gifu Women s University, 80, Taromaru, Gifu City 〒501―2592 （Received September 20, 2012） ポットライトが移動するために反応が遅くな 1．問題と目的 ると考えられている。 　ヒトの環境認知は視覚に大きく依存し，そ 　さらに先行手がかり法は，手がかりの呈示 の情報処理には常に注意が介在している。こ 方法によって二つに大別される。一つが周辺 うした視覚的注意，特に空間的注意研究は 手がかり，もう一つが中心手がかりである。 Posner （1980）による先行手がかり法の考案 周辺手がかりは，手がかりが標的と一致した によって目覚ましい発展を遂げた。彼のパラ 位置 （あるいは標的付近）に呈示される。こ ダイムは，手がかり刺激に続いて，凝視点の れに対して，中心手がかりは，例えば矢印の 左右に呈示される光点 （標的刺激）の検出時 ような空間的な位置を示す刺激が視野の中心 間を測定するという非常にシンプルなもので に呈示される。周辺手がかりと中心手がかり ある。実験は手がかりによって操作され，手 における注意の特性として，周辺手がかりは がかりが標的の空間的位置を示している有効 受動的，外発的に注意が捕捉されるのに対し， 条件，手がかりが標的の空間的位置を示して 中心手がかりは能動的，内発的に注意が向け いない無効条件，手がかりが呈示されない， られる。こうした質的な違いを示す一つの根 もしくは手がかりの機能をもたない中立条件 拠は注意効果が生じるまでの時間にある。通 が設定される。すると，有効条件の反応時間 常，周辺手がか りはSOA （stimulus onset は中立条件よりも速くなり，無効条件は中立 asynchrony）50 ms から手がかりによる促進 条件よりも遅くなる。そして，その “利得” 効果 （注意の捕捉）が認められ，SOA200 ms あるいは “損失”を注意効果とみなす （損失 よりも長くなると抑制効果 （復帰抑制）が認 利得法）。こうした注意効果の説明として， められる （e.g., Egeth Yantis, 1997; Posner 有効条件では手がかりによって標的が呈示さ Cohen, 1984）。他方，中心手がかりに関して れる空間へと注意のスポットライトが予め移 は，促進的な注意効果が生じるまでにはSOA 動するために光点の検出が速くなる一方，無 30