無線LAN を用いた自然災害危機管理模擬訓練システムの構築.docVIP

無線ＬＡＮを用いた自然災害危機管理模擬訓練システムの構築 Development of Risk Management Training System using Wireless Local Area Network 小林一郎* 菊池良介** 橋本淳也*** 星野裕司**** I. Kobayashi R. Kikuchi J. Hashimoto Y. Hoshino 【抄録】国土交通省では、これまでに災害時の危機管理対応強化を目的とした模擬訓練を実施している。この訓練はロールプレイング形式で、訓練生が講師から与えられた情報を受け、自らの判断で応対しながら情報伝達を行う。この方法では、付与情報の管理や配布を行う講師側の負担が大きい。本研究では、付与情報の電子化およびネットワークによる配信を目的として無線ＬＡＮシステムの構築を試みた。無線ＬＡＮは、ネットワークの構成が設備環境に依存しないため、訓練会場を自由に選定できる。さらに、ケーブルを有しないため、訓練会場内でのレイアウトも自由に設定できると同時に、訓練参加者の会場内でのアクティビティーを確保できる。 【Abstract】In the Ministry of Land, Infrastructure and Transfer, it is carried out several times a year simulation training in order to strength the ability of communication among staffs just after the natural disaster occurs. This training is such a roll-playing game that trainees judge themselves and takes action based on situations that are given by trainers. Because trainers have to hand out many papers written situations to each trainee, trainers are so busy during the game. This paper presents a development of electronical information delivery system using wireless local area network (LAN) in order to simplify the trainers work. We describe outline of the system and show some results of the training. 【キーワード】訓練システム、無線ＬＡＮ、危機管理阪神?淡路大震災をきっかけに、危機管理に対する関心が高まっている。自然災害に対してはハード対策（砂防ダム、堤防の整備等）だけでは限界があり、ソフト対策（保険、防災意識の高揚、関係機関の対応）の重要性が増してきている1)。ソフト対策の中でも、関係機関の対応は被害の大きさを左右することもあり得る2) 。 そこで、国土交通省は、災害時の危機管理対応強化を目指し、模擬演習による災害対策要員の訓練を実施している３）。例えば、九州地方整備局では毎年行われる危機管理研修のカリキュラム中に土石流災害をモデルとした模擬演習を取り入れている。 ここで実施される模擬演習は、ロールプレイング形式によるものである。この演習には講師と訓練生が参加する。講師側はあらかじめ準備した?状況付与カード?を、時間を追って提示する。「状況付与カード」には災害の発生、被災状況、外部からの要請などが記載されている。訓練生側は、この内容を受けて、各自与えられた役（対策本部長、マスコミなど）に応じて自主的に対処する。そのため、演習の進行は、「状況付与カード」の管理、配布を行う講師側により左右され、講師側の責務と負担が大きい。 そこで、本研究では、「状況付与カード」の一元的な管理および配布を行うシステムを開発する。これは、「状況付与カード」を電子情報化し、無線ＬＡＮを介して各研修生班に配布するものである。電子化された状況付与カードは、管理?配布などのコントロールが容易にでき、演習の進行における講師側の負担を軽減することができる。 本稿では、第２章で本研究が対象としている演習の概要、課題について述べる。第３章で構築したシステムを紹介し、第４章ではそのシステムを実訓練へ適用し、本システムの有効性を明らかにする。 ２．自然災害危機管理模擬訓練の概要 ２．１　訓練の目的 災