低温処理や氷温貯蔵および長日処理がアリウム「札幌1 号」,「札幌2 号」 の開花に及ぼす影響.pdfVIP

北 海 道 農 研 研 報 195,　13-21　　（2011） 13 低温処理や氷温貯蔵および長日処理がアリウム「札幌１号」， 「札幌２号」の開花に及ぼす影響 篠田浩一・村田奈芳 Ⅰ．緒　　論 幌１号」の球根増殖と試作栽培が行われ，2009年か Allium 　 ネギ属（ L.）はネギ科（広義のユリ科）に属 ら商品名「ブルーパフューム（Blue Perfume）」（藤 し，北半球の各地に750種以上が分布している 田，2011）として球根の販売が開始された。現在北 （STEARN，1992）。その中には鑑賞価値の高い種類 海道と熊本県の生産者を中心に切り花生産が行われ が多く含まれ，我が国では切り花用や花壇用，ある ており，東京の太田花き市場や世田谷花き市場，札 いは山野草として現在20種類以上が栽培されてい 幌花き地方卸売市場等に出荷されている。一方，「札 る。鑑賞用として栽培されるアリウムの大部分は野 幌２号」は2008年秋から球根増殖が始まり，商品名 生種およびその選抜系統であり，種間交雑によって 「スカイパフューム（Sky Perfume）」として球根の 育成された品種は「グローブマスター（Globe- 販売が始まった。 master）」や「グラディアトール（Gladiator）」（van 　「札幌１号」，「札幌２号」の札幌での自然開花期 SCHEEPEN，1991）など Melanocrommyum 亜属に属す は６月中旬であり，ほぼ集中して開花する。花卉類 る数品種と，福井県園芸試験場で育成された「オー においては，出荷時期の拡大つまり作型の多様化が タムヴィオレ（Autumn Violet）」や「オータムヴィ 古くから追求されており，出荷期間を長くすること オ レ ミ ニ（Autumn Violet Mini）」（NOMURA et al., に成功した種類はその消費量も増大した（小西ら， 2005）など Rhizirideum 亜属に属する数品種があるの 1988）。球根類の中で切り花消費の多いユリやフリー みと極めて少ない。アリウムは野生種が非常に多く， ジアも出荷期間が長く，今後「札幌１号」，「札幌２ 種により花色や花序の形，草丈，開花時期が大きく 号」の消費量を増やすためには，開花調節技術の開 異なること，耐寒性を有する種類が多く北海道での 発による出荷時期の拡大が必要と考えられる。 栽培に適していること，切り花や花壇など多様な用 　アリウム類では，いくつかの種類で花芽分化を含 途が期待できることから，北海道農業研究センター む生育開花習性の調査（古平ら，2001，2004；KODA- では，1995年より種間交雑育種による新規性の高い IRA and FUKAI，2005）や温度処理あるいは日長処理 品種育成に取り組んでいる。 に よ る 開 花 促 進（ 古 平 ら，1996a，1996b，2000a， 　この中で，筆者らは Allium 亜属に属する中央ア 2000b；金子ら，1995；本図・浅野，1992；篠田・ A. caesium ジア原産のカエシウム（ ）とカエルレウム 村田，2004，2006）が報告されている。またユリや A. caeruleum チューリップでは氷温貯蔵による抑制栽培や周年栽 （ ）の種間交雑により，青色の花でバニ ラエッセンスに似た甘い