植物内生細菌を利用したナス科青枯病の生物防除に関する研究.pdfVIP

資料２ 植物内生細菌を利用したナス科青枯病の 生物防除に関する研究 相野 公孝 氏 （５５歳） 兵庫県立農林水産技術総合センター 農業技術センター環境・病害虫部部長 兼病害虫防除所所長 １ 業績の概要 背景 作物の病害虫防除には、農薬などの化学物質が用いられ、多大の効果を挙げてきた。その反面、これら の化学物質の長期連用によって、土壌生態系の単純化や環境への影響が懸念されている。このような背景 の中で、化学物質に代わる新たな素材の開発が世界的に志向され、生物的防除の研究に目が注がれるよう になった。しかし、実験室レベルでの成功例は多く報告されているにもかかわらず、ほ場レベルでの成功 例は少ない。特にナス科青枯病は、病勢の進行が早く一旦発生すると作物を全滅させるような甚大な被害 を及ぼす。そのため、生産現場からは効果的で環境に負荷を与えない防除対策が切望されていた。 研究内容・成果 蛍光性シュードモナス菌が、青枯病菌に対して拮抗能を有することを発見した。本菌はナス科植物の根 内に侵入し、病気を引き起こさず、細胞間隙に常在化し内生することを世界に先駆けて見いだした。この 内生能を利用して、これまで不可能といわれていたほ場レベルでの拮抗菌の定着を実現し、土壌病害に対 する生物的防除を飛躍的に進歩させた。また、生物農薬の実用化に際して大きな障害であった製剤化問題 に取り組み、培土に内生細菌を吸着させた育苗用培土を開発して、培土に播種するだけで自動的に根内に 内生細菌が定着し、青枯病に対する抵抗力を強化した植物を育成するシステムを構築した。さらに、生物 農薬として製剤化を行い、共同研究のメーカーとともに商品化を成功させた。この内生細菌の発見と実用 化が生物的防除の研究分野にとって先駆的、先導的役割を果たし、IPM(総合防除)技術の発展に貢献した。 細胞内部 試験飼料 対照飼料 試験飼料 対照飼料 試験飼料 対照飼料 試験飼料 対照飼料 細胞内部 細胞内部 無処理区 処理区 蛍光性シュードモナス菌の内生したトマト根表面の走査型電子顕微 内生細菌によるトマト青枯病の発病抑制 鏡写真(左）と細胞間隙のレーザー顕微鏡写真(右）、赤丸内部の菌 効果 株の透過型電子顕微鏡写真（中央） 普及状況 本開発技術に関して我が国内だけでなく、アメリカ、ヨーロッパ等計5カ国において国際特許を取得した。 本拮抗菌を商品化し、トマト、ナス、ピーマンの青枯病に農薬登録を取得した。さらに、フザリウム菌に よる難防除土壌病害であるトマトの根腐萎凋病、ニガウリのつる割病に対しても登録の拡大を図った。 ２ 評価のポイント 微生物の生態や病原菌の感染生理などの基礎的分野から生物農薬としての生産現場への応用に至るまで広 範囲にわたる研究成果を挙げ、IPM技術の有効な事例を確立し、農産物の持続的安定生産の確保に貢献した ことを高く評価した。 【連絡先】兵庫県立農林水産技術総合センター （住所：〒679-0198 兵庫県加西市別府町南ノ岡甲1533 TEL ：0790-47-1222） 千葉県における地下水の特性とその農業利用 及び保全に関する研究 金子 文宜 氏 （５９歳） 千葉県農林総合研究センター センター長 １ 業績の概要 背景 千葉県は全国有数の園芸農業が盛んな県である。しかし、地下水が海水の影響を受け養液栽培の原水と して不適な場合が多く、省力化、生産性の向上が期待できる養液栽培への移行が停